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旧暦の10月13日は、日蓮宗の開祖である日蓮が没した日である(新暦では11月21日)。日蓮は鎌倉時代に安房国(現在の千葉県南部)に生まれ、天台宗に学び日蓮宗を起こした高僧だ。日蓮宗は日蓮の没後、さまざまな宗・流派が誕生し、教義についてまとめるのはかなり難しいのでここでは割愛するが、日蓮の命日に行われてきた「お会式(えしき)」は、全国的にも歴史的にもよく知られる一大行事として上げてもよいのではないかと思う。
【錦絵に画かれた本門寺お会式や、関東で一番古い五重塔などの写真はこちら】
●日蓮が没した場所に建立されたお寺
日蓮は60年の生涯を、東京大田区の池上本門寺の地で閉じた。
日蓮が開いた山梨県の身延山久遠寺から、病気治癒のために湯治に向かう途中、宿をとった池上宗仲邸で倒れ、そのまま没したのである。久遠寺を発ってからわずか1月あまりのことであった。この屋敷跡に建つのが、本門寺の本坊・本行寺で屋敷裏の敷地に日蓮の供養として本門寺が建立されるのである。
●「お会式」は日蓮忌を指す言葉に
「会式」とは、仏事の供養全般を指す言葉であるが、時代が下るとともに次第に「お会式」と言えば、日蓮宗にとっての日蓮の法会、10月13日を中心とした法要行事を表すようになっていく。これは、日蓮宗、特に池上本門寺で行われる法要が盛大であったためであろう。
江戸時代の錦絵にも、広重・豊国の手によりその様子が描かれている。手には日蓮宗特有の団扇太鼓が握られているのが見て取れる。
実際、俳句では秋の季語として「お会式(あるいは御命講)」が使われていて、かの芭蕉も"御命講"での句を詠んでいる。
●参詣者のための鉄道敷設
日蓮入滅の際、庭の桜が季節外れの花を咲かせたという言い伝えからお会式桜を模した万灯(まんどう)を掲げ、約3千人もの人たちが練り歩く万灯練行列は、命日の前日12日に行われ、これに江戸火消しのまといなどが加わり大変華やかである。現在でも、本門寺の「お会式」には全国から30万人以上の人々が集まっている。
この人気を象徴するのが、東急電鉄の池上線だ。