「適応障害ですね」

 ストレスに適応できないため、心や体にいろいろな症状が出て、日常生活をうまく送れなくなる病である。職場には言えない、言えない。彼はしばらく相談できずにいたが、耐え切れず上司に告白した。すると、またたく間に話が広がった。

「あいつ、適応障害だってさ」

 休職に追い込まれた。NPOでしていたろうの子どもたちを支援する活動も、休ませてもらった。気分転換に、SNSに投稿したことがあった。職場の人が連絡をくれた。

「あの人、休職中なのに遊んでいるらしい。そう言われていますよ」

<ぼくはどうしたらいいんですか?>

 休職で心が回復したとする。そして、職場に戻ったとする。でも、彼が仕事に打ち込めるはずがない。なぜなら、そこにいるのは、彼を追い詰めた人たちばかりなのだから。

 わたしたちは同情するだけでいいのだろうか。

 みなさんがろう者のことを理解し、変わらなければ、同じことを繰り返すだけだ。いま、この瞬間も、ろう者が苦しんでいる。