そして10年後の2007年6月、ジョブズが初代のiPhoneを発売したことでアップルの時価総額は1000億ドルを突破、2010年には2959億ドルで世界時価総額ランキングのベスト10に初めてランクインしたかと思うと、翌2011年にはエクソンモービルを抜いて1位となり、2018年には世界初の1兆ドル企業の座についています。

 そこには2つの疑問があります。1つは「身売りか倒産か」という企業をなぜジョブズは世界一の企業へと成長させることができたのかであり、もう1つは2011年にジョブズが亡くなった後もなぜアップルは成長し続けることができたのか、です。

 ジョブズは暫定CEOに就任して以降、iMacに始まり、iPodやiPhone、iPadなど「世界を変える」ほどの商品を次々と発表しています。こうした圧倒的な商品をつくることでアップルのブランド価値は他社を圧倒するものとなり、結果、アップルが急成長を遂げたというストーリーはよく分かります。

 まさにイノベーターでありビジョナリーでもあるジョブズの真骨頂と言えますが、当時から言われていたのは「ジョブズ亡きあとのアップルはどうなるのか?」でした。カリスマを失った企業が凋落へと向かうというのはよくあることです。その経営者が偉大であればあるほどその反動なのか、企業は魅力も方向性も失ってやがては市場から消え去るか、「過去に繁栄した大企業」になり下がるだけなのです。

 ところが、アップルは凋落どころかさらなる成長を続けています。もちろんCEOティム・クックの経営手腕もあるわけですが、それ以上に今日のアップルを見れば見るほど生前のジョブズが力を注いでいたのが「最高の商品づくり」と同時に「最高の企業づくり」だったことがよく分かります。かつてこんな言葉を口にしていました。

「魂を持ち合わせた100億ドル企業にしたい」
「僕は、いつまでも続く会社をつくることに情熱を燃やしてきた。すごい製品をつくりたいと社員が猛烈にがんばる会社を」

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すぐれた商品はいきなり誕生するわけではない