一方、トランプ大統領は、知的財産権侵害への制裁で中国に追加関税をかけた。しかも、それをさらに大幅に拡大する予定だ。今後は、EUや日本と組んで、知財問題などで中国を追い詰めようともしている。そんな中で、日本だけが抜け駆け的に中国との経済関係を強化しようとすれば、トランプ大統領の怒りを買い、FFRでさらに強硬な要求を突き付けられるかもしれない。

 また、安倍総理を嫌中派だと信じて支持して来た右翼層との関係でも、あまり中国に擦り寄るのは危険だ。

 さらに、何よりも、大嫌いな中国に擦り寄っていると世間に見られること自体、安倍総理にとっては、自分のプライドが傷つけられる。何とかして、習近平氏がすり寄ってきたのだという解説が流れるようにしようとするだろう。

 トランプ氏に付き合って、イケイケどんどんでやってきた安倍総理。手のひらを返したように急に中国に近づいたと思われるのも困るが、かといって、あまり米国寄りの姿勢を出し過ぎると、また中国に冷たくされるかもしれない。かなり難しいかじ取りを迫られる。

 今でも、「トランプと習近平、どちらを取る?」と聞かれたら、安倍総理は、表向きは「トランプ!」と答えるだろうが、今の安倍総理の心中は、相当複雑になっているのではないだろうか。

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