佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける
この記事の写真をすべて見る
ふと妻に聞いた。「沢庵ってさ、要するにさ、何なの?」(※写真はイメージ)
ふと妻に聞いた。「沢庵ってさ、要するにさ、何なの?」(※写真はイメージ)

 個性派俳優、佐藤二朗さんによる「AERA dot.」の新連載「こんな大人でも大丈夫?」。日々の仕事や生活の中で感じているジローイズムをお届けします。

*  *  *

「ものを知らない」。よく言われる。事実そうだと思うし、大人として恥ずべきことだと自覚している。「アヒージョ」という言葉は2年ほど前に知った。それまでの47年間、僕の人生にアヒージョはなかった。知ってからは3日に1回くらいアヒージョを食べている。食べ過ぎだ。でもめっさ旨いよねアヒージョ。

「カマドウマ」は数日前に知った。妻が「最近、わたし、腕が太くなっちゃって…カマドウマみたい」と言うので、「え何? 何ウマ?」と聞いたことにより知った。妻は呆れながら、昆虫の一種だと教えてくれた。

 先日、晩酌中にふと、本当にふと思って、妻に聞いた。「沢庵ってさ、要するにさ、何なの?」。妻は「ちょっと」と小声で囁き、僕を別部屋に導いた。「父の威厳が失墜するから、息子の前で変な質問やめて」と怒られた。そりゃそうだ。沢庵は大根の漬け物だ。ちょっと考えれば分かる。いや考えなくても分かる。常識だ。しかし、なんか俺、沢庵は沢庵だと思ってたんだよね。幼き頃より当たり前のように食卓にあった沢庵は他の何者でもなく要するに沢庵だと思ってたんだよね。いや勿論、沢庵は沢庵なんだが、沢庵が大根というところまで頭が回らなかったというか、要するに僕ちょっと馬鹿なんす。これマジで。

 いや、開き直るのはよそう。無知は恥だ。恥ずべきことだとしっかり自覚し、しっかり恥じよう。そして無知を改めるよう努めます、ハイ。

 僕の知り合いの舞台演出家に、とんでもなく、本当にとんでもなく、財布や携帯を置き忘れる人がいる。あらゆるところに置き忘れる。自宅はもちろん、稽古場、居酒屋、タクシーの車内、電車の座席、果てはバス停に置き忘れる。あまりに頻繁に置き忘れるので、何かのギャグかと思ったが、どうやらギャグではないらしい。本人は至って真剣に悩み、なんとか改善したいと思っている。で、その矢先にまたどこかに置き忘れる。「もう泣きたいよ」とは本人の弁。

次のページ
「人に批判されること」を喜びに変える人も