小説『乱反射』がドラマ化されることを記念して、作者である貫井徳郎さんのトークイベントが、9月11日、東京・八重洲ブックセンター本店で行われた。作品のドラマ化に対する思いや創作の裏話にいたるまで、様々なエピソードが披露された。
* * *
「正直、最初は『こんな難しい話をよくやろうとするな』と思いました」
冒頭、貫井さんは、自身の作品である『乱反射』の映像化の話がきたときの感想をこう語った。
『乱反射』は、2009年に発表された長編ミステリー小説だ。ある日突然、幼い息子の命を奪われてしまった新聞記者の加山聡と、その妻・光恵。当初、不慮の事故と思われていた悲劇は、実は様々な市民の「罪にもならないような小さな罪」が、連鎖した挙句の果てに引き起こされた“殺人”だった――。
完成されたドラマを観て、貫井さんは「登場人物の関係や時系列がよく整理されていて話の展開がわかりやすかった」とたたえた上で、「作品のテーマの描き方は原作よりも難しくなっている」と話す。
「良い意味で、自分の作品という気が全くしませんでした。小説と映像ではそもそも表現の形式が違うので、単純に原作をなぞれば面白い作品になるわけではありません。その点、今回は監督の作家性が発揮されていて、ドラマなのに映画を観ているような重厚さがあった。一筋縄ではいかない感じ」
撮影中は、現場にも足を運んだほか、脚本も自らチェック。「ラストシーンは原作とは違うものになっています」という。
また講演会では、この日のために作られたスペシャル予告動画も披露され、加山聡役の妻夫木聡さん、光恵役の井上真央さんらからコメントが寄せられた。
同作で初めて母親役を演ずる井上さんは「それぞれの立場や環境に応じて、感じ方は違うと思いますが、夫婦が助け合っていく姿をぜひ見守っていただけたら」と話す。
また、妻夫木さんは「(誰でも)自分の話なのかなと思える部分があると思う。夫婦が苦しみながらも、『人間とは何か』ということを考えてもらえるような作品になっていると思うので、そこらへんを噛みしめつつ観てほしい」と語った。