一方、東日本大震災の被災自治体へのアンケートでは、憲法上の裏付けがないことで災害対応の判断を躊躇したとの意見もあり、緊急を要する時には緊急政令で法律の適用をスムーズにする必要があるのではとの意見がありました。それを裏打ちするような条文が入ることは、今の状態よりは良いことだと私も思っています。

 党の素案では、緊急政令は内閣に委ねられています。もともと2012年にまとめた自民党の憲法改正草案では、緊急政令は100日ごとに国会の承認を取ることになっていたのですが、今回の素案では期限が設けられていません。今後、国会の憲法審査会で政令の期限について議論を進めていきたい。私は、政令見直しの期限は1週間でもいいと思っています。

■改憲の議論が進まない理由に安倍首相の発言

──安倍首相が憲法改正をたびたび主張することに野党が反発し、逆に国会の憲法審査会が開かれない状況になっています。

 14年に与党が総選挙で勝利したあと、安倍首相が憲法改正の発議に必要な「衆参それぞれの本会議で総議員の3分の2以上の賛成」という96条の条文を、2分の1にしたいという発言をしました。当時、党内ではそんな議論はありませんでした。議論されていたのは、環境権などの新しい人権や緊急事態条項、財政規律で、民主党(当時)とも、これらの内容で議論をしていました。そのなかで首相が突然、96条の改正を言い始めたことで、憲法審査会もストップしてしまいました。

 私自身も、その後に「96条を変えるつもりはない」ということを首相に伝えました。憲法改正の発議は、国民を代表する国会で行われます。そのなかで、行政のトップである首相が憲法について発言すると、そのたびに憲法審査会が止まってしまう。

 今年5月の集会でのビデオメッセージも含め、首相が憲法について発言するたびに野党が反発し、今年の通常国会では結局、憲法審査会はほとんど開けませんでした。

 憲法は国民がイニシアティブを持ってやるもので、国会主導による議論が行われることが望ましい。安倍首相が「党総裁」としての立場で憲法改正について発言をしても、やはり「政府のトップ」としての発言として捉えてしまいます。行政の長である首相は、改憲についての発言は避けた方がいい。

──すでに立憲民主党など野党の一部は「安倍政権下では憲法改正の議論に応じない」と主張しています。

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来年の通常国会での発議は難しい