私は、立憲民主党のように、憲法は権力を縛ることにかたくなにこだわるような形の立憲主義者ではありませんが、憲法はすべての法律の大本になりますので、現在と未来の国民の権利を守ることが中心であるべきだと考えています。
現在の国会は衆参両院で憲法改正に積極的な議員が3分の2を占めているので、公明党などの理解が得られればたしかに発議はできます。しかし、それを強引にやると国民投票で否決される可能性がある。やはり、野党第一党の立憲民主党や国民民主党をはじめ、できるだけ多くの野党から理解を得られるような発議にしなければなりません。
■参院選と国民投票のダブル投票は難しい
──来年夏の参院選は、国民投票とダブル投票になるとの見方もあります。
党内の一部に、そういった考え方を持っている人がいるようです。しかし、来年の参院選と国民投票のダブル投票は、現実的に難しい。公職選挙法はガチガチに規制がありますが、国民投票運動は基本的に自由。同時に実施した場合、2つの法律をどう解釈するのか。期間中の国会議員のどの発言が憲法改正のもので、どの発言が選挙活動なのかは明確に区別できない。ダブル投票は大混乱が起きる可能性がある。現実的に考えれば、できないと私は思う。
──イタリアでは、上院改革をまとめた憲法改正案が国民投票で否決され、レンティ首相(当時)が辞任しました。国民投票で否決されたら、安倍首相にも政治責任を問う声も上がるのではないでしょうか。
自民党の素案にこだわらず、野党の意見を幅広く聞き入れ、修正を行い、その上で発議をして国民投票をしたのなら、否決されても安倍首相の政治責任にはならないでしょう。国会が、与野党一緒に出した提案が否決されたことになりますから。
しかし、与野党で重要な問題について議論が割れているのに、自民党が強行採決をして、その過程で安倍首相が指示を出していたとなると、国民投票を主導した安倍首相の政治責任を問う声は出てくるかもしれません。安倍首相の政治責任が問われるような国民投票は避けるべきです。そのためにも、安倍首相は自重されたほうが望ましい。