山尾氏はそのまま東京学芸大学附属高校に進む。高校時代はよくカラオケに行っていた。

「私は声が低いので、中森明菜とかの歌がわりと得意でした」(『受験物語』)

 本格的に受験勉強を始めたのが、高校3年の9月から。はじめから東京大をめざしていた。学校が終わってから近くの図書館で1、2時間勉強。家に帰ってからも5~6時間は机に向かっていた。駿台予備学校、代々木ゼミナールにも通っている。

 山尾氏は受験勉強の極意をこう掲げている。

(1)友だちの勉強法もずうずうしく盗んでしまう
(2)薄い問題集はすぐ終わりそうで、精神衛生上とてもよい
(3)不得意科目は先に終わらせたほうが気は楽
(4)選択問題を解くコツは出題者の心理の裏を読む
(5)なぜ間違えたかを検証するうちに、解き方がつかめる
(6)苦手だった古文は外国語だと思って勉強した
(7)英単語を覚えるときも構文ごと丸覚え

 そのためにはどのような心構えが必要か。

「『自分は勉強が苦手だ』とか『ちゃんと覚えられない』と思っている人もいます。でも私にとってみれば、すこしきつい言い方かもしれないけど。“ほんとうに自分のものにしよう”という気合いが足りないのではないかと思います。(略)

 もちろん、完璧に暗記するには3回ぐらい繰り返すことが必要です。でも、そんなふうにしても覚えられないというのは、やっぱり『覚えよう』という気合いが足りないからじゃないかと思うんです。集中力を持って、声に出したり書いてみたりして自分で工夫すれば、きっと『暗記が苦手』という人も克服できると思います」(『受験物語』)

 3回読めば暗記できるというのは、相当に地頭が良くないとむずかしい。多くの受験生はそんなには覚えられない。気合で東京大に合格してしまう山尾氏は、神童だったのだろう。

 ところで、山尾氏は受験前、友だちの家に泊まり込んで一緒に勉強している。

「『めんどう臭いから、合宿にしちゃおうか』みたいな感じになってきて、1月はほとんど、合宿のような感じで勉強していました。といっても、いちおうは3、4日泊まると一度家に帰って、1、2日くらい一人で勉強して、また行く、それが基本パターンでした。離れでしたし、歯ブラシも着替えも持ち込んで、二人きりで生活しているような気分になって、なんとなく楽しかったですね。(略)

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