私が「パパはここにいるよ。お墓に入っても、パパはずっと私たちのそばにいるんだよ」と言っても、「いやだ」って。それは夫の母も同じ気持ちだったので、2人にとってのよいタイミングで納骨しようと思っていました。

 娘が「パパをお墓に入れようと思う」と言ってくれたのは、七回忌のときです。時間がたつにつれて、「パパはいつだって心の中にいる」って思えるようになったのでしょうね。

長女の夢は「病気を治す人になりたい」

――そんな長女さんも今年から薬学部の大学生。薬剤師を目指すようになったのは、川島さんの闘病がきっかけだそうですね。

 はい。子どもながらに父の病気の深刻な状態には気づいていたようで、夫の生前から「病気を治す人になりたい!」と言っていたんです。

「だったら医学部を受験するほうがいいんじゃない?」と言ってくださる方もいたんですが、本人は高校2年生の段階で「薬剤師になる」と進路を決めて、教科選択をしたようです。

 娘は指定校推薦で合格したのですが、願書にはこんなことが書いてありました。

「当時の父の病気には、治療の選択肢が少なかった。だから、どのように病気が発症するのかを研究し学び、効果的な治療薬を患者さんに提供できる薬剤師になりたい。それを見守る家族にも寄り添える薬剤師になりたい」って。

 薬剤の研究の道に進む選択もあるし、チーム医療の一員として臨床の場で患者さんの役に立ちたいという思いもあるようです。

 まだまだ夢の入り口ですが、6年間かけて患者さんやその家族に役立てる薬剤師になってほしい、夢をかなえてほしいと願っています。

――須藤さんは母として、進路にどのようなアドバイスをしたのですか?

 うーん。アドバイスは……しなかったですねぇ(笑)。

 長女の場合、本人に最初から確固たる意志があったので、そこに口出しすることはありませんでした。

 ただ、娘が入学した大学は、当初は第1志望ではなかったんです。一般受験で第1志望の大学を受験するか、指定校推薦で現在の大学に入るかについて、ものすごく悩んでいました。

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