――MBA理論で伝えることが、息子さんに合った戦略だったのですね。

 子育てに関しても、わが子を「ひとりの人」ととらえてみてみると、「なぜわからない、できないんだ?」などと感情的にならず、「どうしたら彼のパフォーマンスが上がるか?」とビジネス的視点で考えることができます。そのほうが、発達障害の特性に悩む親はもちろん、子育てをする多くの親御さんのストレスが少なくなると思います。

 常に「上位概念は何か?」を話し合って共有することも心がけています。企業経営でいう「ミッション」「ビジョン」「クレド(行動指針)」などのことです。勉強をする意味や、受験をする理由を、親も本人もお互いに理解していないと、「なんのためにどこに向かって勉強しているのか」がわからなくなります。そこを意識することが大切だと、日ごろから息子と話しています。

親が何かを伝える前に、まず子どもの声を聞く

――わが子を「ひとりの人」としてとらえ向き合うということは、親としてなかなかできないことでもあります。

 簡単ではないですね。でもやはり、子どもに何かを伝えたいと思えば、おおげさではなく何百種類の言い方で、こちらが伝えたいことを伝えようと努力しないといけないと思うのです。大切なわが子だからこそ、です。

 息子は発達障害特有の不器用さから思い通りにいかないことが多くあります。イライラしやすいようですが、それを指摘すると、小学生のころはイライラがより一層炎上することもありました。

 私はどういう言葉で息子に伝えれば、これが問題であると言うことを理解してもらい、改善への助けができるかを考えました。彼の行動の背景には、どんなことがあって、どんな気持ちで、なぜそういう行動をしたのか、彼自身がどう解釈しているのか、発達障害に関する大量の知見を元に特性を加味しながら、息子の話を分析して、丁寧に問題の輪郭を整えるようにしていました。シンプルに「叱る」「怒る」の選択肢を選ばないように気をつけていました。

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