難易度切りの大学序列と違った視点が見えてくる

 この変動には、いくつかの要因がありますが、その一つは理系への進学志向の高まりでしょう。

 この理系人気の背景には、近年私学(私立中高一貫校)で急速に拡大している「高大連携」、つまり高校と大学が連携した学習や教育が進んでいることにあります。高大連携が進展し、中高の段階から大学訪問、出前授業、探究などを通して大学と深く付き合えば、大学の「真価」を体感し、大学を見る視点が豊かになります。この場合、研究施設、圃場(ほじょう。農産物などを育てる場所)などを有し、実験など豊かな体験を用意できる理系専門大学には優位性があり、それが今後のさらなる理系への進学者増につながっていくでしょう。

 ちなみに、理系に進学しないにしても、進路は幅広く考えていきたいもの。そうなると、大学付属校の内部進学率の高さは、かえって魅力ではなくなってしまいます。特に難易度の高い首都圏の私立大学、早慶上智、MARCHは特に理系分野では万能ではありません。生物系、医学系、農業系の学部をそもそも有していない場合もあります。理系学部があったとしても、理系の専門大学と比較すると、施設、予算、研究力などからみると、難易度切りで見る大学序列とはまったく違ったものが見えてくるのです。

 取材などで、「大学付属校の人気はどうでしょうか?」という質問を受けることも少なくありません。

 どのマーケットもそうですが、どのあたりに位置するグループを取り上げるかによって、とらえ方は異なるでしょう。中学受験というマーケットは、いわば「ゆっくり歩いている大きな四足歩行動物」です。急速な動きはしませんが、時代の変化とも歩調をあわせて変化しているので「歩いている」という表現です。さらに、時代の動きに敏感で「前を見ようとする」頭部や前足部分にいるグループと、「あまり変わらないんじゃないか」と考える、腹や後ろ足部分にいる保守的なグループでは傾向が異なります。

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