内部進学率が高い大学付属校を志望する層は、基本的には保守的なグループで(もちろん全てではありませんが)、このグループは一定数いますので、そこだけに注目すると、大学付属校の人気は続いているように見えます。

 一方、「前を見ようとする」頭部や前足部分にいるグループの保護者は、進路を自由に選べる、進学校に向かう傾向がみられます。

私学が「先取り」を掲げなくなった理由とは

 このような背景を受け、中高一貫教育の流れは大きく変化しています。別表に、中高一貫校のイメージの変遷と公立中→公立高校の流れをまとめました。1990年代までは、私学では「先取り」に重点が置かれていました。「中高6年分を高2までに終え、最後の1年間を大学受験の準備のために費やせる」から難関大学に合格でき、それが私学の優位性として語られていました。しかし、これには問題が二つありました。

 まずは「先取りは弊害も多い」ことです。私学は公立中より授業時間が多いこともあり、結果として先取りになる教科もありますが、理解するのに時間がかかる教科・分野で、急ぎすぎると理解・定着がおろそかになり、結局後でやり直す場合も生じます。

 特に数学は急ぎすぎると、数学嫌いになりがちです。今後の社会では文理双方の力が求められます。数学はどの分野に進んでも必要とされ、生涯付き合うことになるため、数学嫌いになることは避けねばなりません。このような背景もあり、私学では一部を除いて「先取り」を掲げなくなりました。そして前述したように理系への進学が増えれば、なおさら数学嫌いを生み出さないようにするのがより重要となります。

 そしてもう一つは、前述した「中高での進路探し」の大事さが再認識されたことです。「難関大学合格を達成すれば後は楽に生きていける」という学力観は「達成型学力」ですが、前述のように社会は今後も大きく変化していきます。ゆえに大学、そして社会に出た後も積極的に学び続けることが大切となり、そのためには「学びたいこと」で大学を選ばないと持続できません。このあたりの状況も、難易度切りの大学序列が衰退していく理由となるでしょう。「偏差値が高いから」という理由だけで大学はより選ばなくなるでしょう。

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