ただ、そのように非常に高い能力や才能を持っている一方で、多くの苦労を抱えている人が多いことも確かです。いわゆる発達障害の傾向がある人によく見られる「マインド・ワンダリング」という症状もその一つ。常に新しい考えが浮かんできて、一つのことに集中できなくなるというケースです。一方で一つのことに集中しすぎて、ほかのことが一切できなくなる「過剰集中」の状態になる人もいます。 

――ギフテッドと発達障害の関係性にはどのようなケースが見られますか?

 ギフテッドはその名の通り、特別な才能を持っているのですが、同時に、自閉スペクトラム症(ASD)、あるいは注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害の傾向が多く見られます。中には、ASDとADHDを併発している人も少なくありません。

 たとえば、ASDの傾向があるギフテッドは、特定の分野に関しては非常に高い能力を発揮できるものの、日常生活で非常に強い“こだわり”を表したり、いわゆる“空気を読む”ことが難しい場合があったりもします。そのため、対人関係がうまく築けない場合もあります。

――ADHDがある場合はどうですか?

 ADHD傾向があるギフテッドは、豊かな発想力を持っていたり、現状を打破するような画期的なアイデアを出したりする力がある人が多いですが、多動性が強かったり、不注意な言動や行動が目立ったりするという ADHDの持つマイナスの要素も、やはり見られます。そのため、社会生活において周囲と衝突してしまい、本人が困り事を抱えているというケースは少なくありません。

 このように、「ギフテッド」と言われながらも、本人が困難な状況に陥っている例はたくさんあるでしょう。こうした問題点についても、家族や周囲の人々は目を向けてサポートしていく必要があると思います。

(取材・文/玉居子泰子)

岩波明先生
著者 開く閉じる
玉居子泰子
玉居子泰子
1 2 3