こんなのんびり屋さんで中学やっていけるのかな。

 コミュ障は母の遺伝と諦めていたけどこのままで大丈夫かな。

 ……なんだか小1から悩みのレベルが変わっていないような(泣)。

 そんな悩んでばかりの6年間だった第一子も、ついに卒業を迎える日がきました。

 卒業式の会場となった体育館の壁を埋め尽くす卒業制作。テーマは6年間お世話になったものということですが、長男の作品は、ふたが羽のように開き浮き上がったランドセルが画面をはみ出して今にも飛び立ちそうでした。絵の少し下のほうには、

「きみの重さには もう慣れた」

 という言葉が添えられています。

 なんだか言いしれぬ感情が込み上げてきました。保護者席に座ってからも、しばらくぼーっとしていた気がします。

 簡潔で絶妙な言葉選び。表現の発想力に構図の新鮮さ。

 あの子、絵は苦手なはずでは? いつの間にこんなセンスを磨いていたんだろう?

 帰宅してからもさらに驚くことがありました。持ち帰ったアルバムの作文には

「二番目の考えが最善である」

 という“座右の銘”が。

 簡潔な文章で理路整然と説明しているわが子の文章を、信じられない思いで、夫婦で何度も何度も読み返しました。

 なぜもっと早く進めておかないの?

 なぜいつもこんなにギリギリなの!

 なぜみんなと同じペースで終わらせられないの?

 いつだってこんなふうに追い立ててきたけれど、口の重い長男から答えが返ってくることはありませんでした。自分でもなぜなのかわからないのだと思っていて、答えられないのに同じ質問を投げつけている私の行動がただの八つ当たりだったのは認めます。ハイ。

 長きに渡った問いへの答えがそこに書いてありました。彼独特のスローペースの理由は、一つひとつ最善の決断をしようと何度も考え直しているから。でもそのせいで遅れたり慌てたりしてしまうことも自覚していて、改善するためにどうしたらいいのかもちゃんと考えているのだと。

 夫も私もしみじみと感動して、長男の考え、そして文章力を素直な言葉で称えました。

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