「小学生では多くが拒食症や、強いやせ願望はないものの食べようとしない回避制限性食物摂取症(ARFID)です。ほっとラインに寄せられた小学生の相談も、偶然かもしれませんが、全員この二つのどちらかでした。中学以降は食欲が我慢できなくなって過食症に移行する人が増えてきます」(河合医師)

家庭や学校のトラブルなどストレスも発症の一因に

 摂食障害の根底にあるのは、強いやせ願望です。近年は女の子が憧れる同性のアイドルやモデルはほとんどが細身で、テレビやSNSなどを通して「スリムな体形が理想」という意識が小学生にも浸透し、ダイエットの情報もあふれています。

 ただ、摂食障害はやせ願望だけでなく、もともとの性格や環境、対人関係などさまざまな要因がかかわって発症する心の病気です。河合医師は「特に家族内のストレス(親子間やきょうだい間の葛藤、親の離婚、家庭内暴力、虐待など)や、学校のストレス(友人間のトラブル、いじめ、受験、部活など)が大きく影響しています」と話します。

「中学生や高校生になれば嫌なことがあってもある程度受け流したり、よそで相談したり、遊びに行って発散したりもできます。しかし小学生だとまだ家庭内や学校内のもめ事を外に持っていく力がないので、ストレスをもろに受け止めてしまいます。やせ願望よりもこれらの要因が発症因子になることも少なくありません。ストレスの手っ取り早い対処手段として、拒食や過食嘔吐に走ってしまいやすい。『やせたね』と褒められれば、達成感や自信が得られます」

発達障害がある子は摂食障害になりやすい

 また、発達障害があると、摂食障害になりやすいこともわかっています。

 強いこだわりやコミュニケーションが苦手といったASD(自閉症スペクトラム障害)の特性や、注意力が散漫でじっとしていられないなどADHD(注意欠如・多動症)の特性は、小学校に入学し本格的に集団行動が始まると目立つようになります。本人にしてみれば学校が面白くないし、周りから落ち着きのない変な子だと誤解され、孤立してしまうことも少なくありません。

NEXT摂食障害の診察で発達障害がわかることも
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