■低学年こそ、好きなことに没頭できる時間を大切に

安浪:入塾テスト対策として何かやらせてみることで、わが子が何にハマるか見えてくることもあるかもしれないです。今は書店に行くといろいろと工夫された楽しい問題集もたくさんあるし、学びにつながるような本もたくさんありますから、親が一方的に選ぶんじゃなくて、書店で一緒に選ぶのがおすすめです。結局は本人が嫌がっているのに無理やりやらせることがよくなくて、それだとたとえ入塾テストを突破してもその後につながらないです。

矢萩:そうですね。せっかくならこれらの体験を通してこの子はこういうのが好きだよね、逆に何となくこういうのは嫌いだよねっていうのがわかってくるといいですね。複数サンプルがあれば、それを重ね合わせたときに、よりその子の個性が見えてきますから、それを家族で共有しておく時間もつくりたいですね。

安浪:一般的な大手塾のカリキュラムに乗ると、学年が上がるにつれて確実に忙しくなります。やらなければいけないことがどんどん増えて、自分のやりたいことが後回しになってしまいますから、低学年のうちこそ、シンプルにやりたいことや好きなことに没頭できる時間を大切にしてほしいです。中学受験の勉強を能動的に楽しめる子はいいですが、やりたくもない勉強を大量にやらされているという感覚になると、自分の時間がなくてやりたいこともできない……という状態から、自分が本当にやりたいこと、興味のあることがわからなくなったり、見失ってしまうこともあります。そうなってしまったらもう、何のための中学受験かわかりませんからね。

(構成/教育エディター・江口祐子)

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安浪京子 矢萩邦彦
安浪京子 矢萩邦彦

安浪京子(やすなみ・きょうこ)/「きょうこ先生」として親しまれている中学受験専門カウンセラー、算数教育家。佐藤亮子さんとの共著『親がやるべき受験サポート』(朝日新聞出版)が好評。最新刊は『中学受験にチャレンジするきみへ 勉強とメンタルW必勝法』(大和書房)。

矢萩邦彦(やはぎ・くにひこ)/「知窓学舎」塾長、多摩大学大学院客員教授、実践教育ジャーナリスト。「探究学習」「リベラルアーツ」の第一人者として小学生から大学生、社会人まで指導。著書に『子どもが「学びたくなる」育て方』(ダイヤモンド社)『新装改訂版 中学受験を考えたときに読む本 教育のプロフェッショナルと考える保護者のための「正しい知識とマインドセット」』(二見書房)。

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