安浪:なぜご主人は都立がダメなんでしょう。都立一貫校を落ちたら地元の公立中になってしまうから? 都立と私立の併願は考えていない、ということでしょうか。

矢萩:学校を選べば私立との併願もできますよね。

安浪:都立専門の塾に通って、都立に無事合格する子はいます。ですが、それはかなり地頭がいい子が多い印象です。私立型の塾に行って勉強していたら難関以上の学校に受かるだろうな、という子ですね。そのようないわゆる「賢い子」を除くと、私立型の勉強もしておかないとなかなか受からないのが、都立一貫校の現状です。最近は都立に合格している子の多くは私立型の勉強もしていると思います。私立型の勉強をしてきた子は知識を多く持っているし素早く問題を解く訓練をされているんですよ。だから有利。「武器」を持っている、というか。ですから、現実的な答えを言うと、「私立型の勉強をしておいたらどうですか?」ってなってしまいます。まあ、私立型の勉強を無理やりさせられて都立にギリギリ合格した場合は、その後伸び悩むことも多いですが……。

■都立は「主体性のある子」を大事にする傾向

矢萩:以前の教え子で、いわゆる中学受験勉強はほとんどせずに、都立小石川中等教育学校に合格した女の子がいました。彼女は、宇宙飛行士になりたいという夢があって、それにまつわる興味を探究しているうちに、流れで受験することになったのですが、都立ってそういう主体性がある子を大事にしますね。やりたいことを頑張っている子で、だからこそ出てきた発想みたいなものがあると、すごく評価されます。ただ、それだけじゃダメで、今安浪さんがおっしゃっていたように基礎学力がないと太刀打ちできない。となると、やはり都立に行きたいなら、小学校の勉強をかなりのレベルで理解している必要があります。そのためには、普通は小学校だけでは難しいですし、そういう学習に特化した塾も少ない。だから結局現実的な最短ルートは、少なくとも国語・算数に関しては私立型の受験勉強をしておいたほうがいいということになってしまいます。まあ、理想的ではないですけれど。

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