石山:はい。最初は38人だったんですが、今では0歳から60代まで60人の多様な人たちがコミュニティーを作っています。
高濱:具体的にはどんなふうに生活しているんですか?
石山:みんなから組合費をもらって共通の口座に入れて、何に使うかもみんなで決めます。血のつながりはないけれど、意識ではつながっている、多様な価値観を共有できる家族。私は、“拡張家族”と呼んでいます。
高濱:役割分担はあるんですか。
石山:とくにありません。みんなが自分のできることをできる範囲でしています。ずっとハウスに住んでいる人も、他に拠点が複数ある人もいます。お互いのスキルをシェアしていっしょに仕事することもあれば、メンバーの赤ちゃんを交代で見たり、メンバーの親の介護のヘルプに行ったり。私はよく朝ごはんを作ります。よくみなさんから勘違いされるんですが、シェアは、ギブ・アンド・テイクではありません。
高濱:等価交換は資本主義経済ですからね。シェアは、損得勘定では考えない。
石山:お互いさま、おすそ分けという支え合いの世界なんです。いわば贈与経済。コミットの量で判断しないのは、家族だからです。メンバーの中によくできた弟もいれば、怠け者の妹がいてもいい。大切にしていることは、互いに問いを分かち合って、対話を続けることでしょうか。
高濱:まさに家族のありよう、家族の本質的な部分を実践、実現していますね。僕は、家族に一番必要なのは、対話をたくさんすることだと思っています。なのに、夫婦や親子でそれができているかというとできていない。今や、拡張家族だからこそできることのほうがたくさんあるのかもしれないですね。
石山:家族の定義は、人によって違っていていいと思います。ただ、親子だから家族で、それ以外は他人です、と線引きをするよりも、その垣根をなるべく低くして、家族の概念をどんどん拡張していければいいなと。自分と他を分けるのではなく、その人をどこまで信頼できるのか、それをどこまで拡張できるのか……。
高濱:信頼が、拡張家族をつくる。
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