石山:そうですね。信頼できる人が増えていくことで、私たちの暮らしはより豊かに、幸せになると思っています。

高濱:結局は心の問題だと思う。知ってるおばちゃんの握ったおむすびは食べられても、誰が握ったかわからないものは食べられない。不安になる。

石山:だから、信頼できる人がたくさんいると、心の安定にもつながります。

高濱:まさにそう。今のおかあさんたちは、親子というタテに閉じた世界の中でしんどい思いをしている人が多い。周囲と軽いおしゃべりはできても、しんどいことをシェアできずに抱え込んで煮詰まってしまう。でもそこにおむすびのおばちゃんが「まあまあ……」って声をかけてくれるだけで、肩の力が抜けて、声を荒らげるのをやめることができる。子どもの手を離して、拡張家族の誰かにまかせることだってできる。

石山:私、拡張家族のゴールは世界平和だと思ってるんです。昔から戦争映画が好きで、紛争や貧困問題にも興味がありました。大学でも、世界平和の研究をしていたんです。でも政治や経済は結局利害関係で動くから、その方法では解決できないことがわかって。世界はなんて不完全なのだろうと悟ってしまったというか。でも拡張家族は違う。ひとごとだと無関心にスルーしてしまうことも、家族のことなら自分ごととして一生懸命考えますよね。シェアって自分ごとになることだから、そうやって少しずつ広がって世界の果てまでつながれば……。拡張家族の発想であれば、世界平和が実現できるのではと思っています。

高濱:タテだけでなくヨコにもナナメにもつながろうという視点ですよね。それはほんとに大切だと思う。石山さんのその発想はいつごろからあったんですか。

石山:やっぱり育った環境ですかね。私は一人っ子でしたが、いつもたくさんの人に囲まれていました。母は私を産んで2週間で海外出張に行くほどバリバリ仕事をしていたんです。私は母乳をほとんど飲まないで育ったんじゃないかな(笑)。でも母は、ご近所ネットワークをちゃんと築いてくれていたので、近所には、私が行くとごはんを食べさせてくれて、かわいがってくれる人たちがいつもいました。

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