高濱:まさに僕はその最後の世代かもしれないな。実際、3軒の家で風呂が共同だった時代がありました。大きく違うのは、昔はモノがなかったからシェアしていたけれど、今はあふれまくっている。

石山:おっしゃる通りです。昔は街頭でみんなで一台のテレビを見ていたのに、一家に一台になり、一部屋一台になり、今は一人で三つぐらいデバイスを持っている。モノの個別化がすごいスピードで進んでいき、地域コミュニティーが崩壊してしまいました。

高濱:とくに都会でね。モノがいきわたりすぎて、つながる必要も機会もなくなって、結果、人間関係も希薄になった。

石山:そんな時代だからこそ、あらためて、何かを共有することで人とつながることを求めるようになったと思うんです。地縁や人脈がなくても、インターネットによって目的に応じ、いろいろなモノを共有できるようになったし、それが新しい喜びになっている。

高濱:ちなみにこの対談場所も、シェアオフィスですよね。たくさんの人がそれぞれの形で利用して、自由に出入りしている様子がよくわかります。

石山:はい。ここをプライベートと考えるかオフィシャルと考えるかは、その人次第。共有し、利用できればいいんです。

高濱:つくづく個人所有が幸せや豊かさの象徴だった時代は終わったんだなと思います。所有は手段であって、目的ではない。そこに真正面から光を当ててくれたのが、石山さんたちだと思う。

石山:私たちの世代は、大量生産・大量消費を良しとする資本主義経済が限界にきた時代に育ちました。資源は有限だし、世界には問題が山積み、災害も絶えない。そうなると、結局、個人の幸せも社会の幸せとつながらないと実現できないのではないかなあと。これまではモノを持つことに一生懸命で、それを目的に競争してきたけれど、それよりもみんなで共有して仲良くしない?と。

高濱:みんなで利用することに価値を置き、幸せを感じる。いいですね。石山さんご自身も、都内のシェアハウスに住んでいるそうですね。

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