国際数学オリンピック世界大会に出場した歴戦のつわものたちを見てみよう。

 1999年、大島芳樹さんは筑波大附属駒場中学2年で出場し、同高校3年まで5回連続出場を果たし、すべての大会で銀メダルを獲得している。大島さんは東京大に入学後、同大の大学院を経て、現在、大阪大大学院情報科学研究科の准教授をつとめる。

 2004年、片岡俊基さんも中学デビューである。高田中学(三重)3年で代表選手に選ばれ、同高校3年まで4回連続出場し、金メダル2回、銀メダル2回という栄誉に輝いた。片岡さんは東京大理学部数学科、大学院修士、博士課程情報理工学系研究科へ進んだあと、プリファードネットワークス社に入社した。AIの最先端技術を手がけるベンチャー企業だ。日本数学オリンピックなどで知り合った先輩が働いていたことが縁で、自ら声をかけて就職したという。現在、産業用ロボットでAIの安全性検証を行っている。東京大学新聞の取材に、こう話している。

「実際の企業が解決したい具体的な問題に触れられる環境に楽しさを覚えます」(東京大学新聞2017年2月7日)

 最近、数学オリンピックで注目されているのが、海陽中等教育学校である。同校は2006年に開学した全寮制の新設校だ。

 2017年に初めて神田秀峰さんが国際数学オリンピックに出場し、銀メダルを獲得した。神田さんは2018年、東京大に推薦入試で入学している。数学オリンピック出場が大きな武器となったのは間違いない。そして、2019年に同校から前出の兒玉さん、平石さんが出場する。いずれも数学部に所属している。

 海陽中等教育学校はなぜ、数学オリンピックに強いのか。同校数学科の濤川貴之先生に話を聞いてみた。

「数学オリンピックに向けた特別な指導は行っていません。ただ、大学数学や課題学習の講座などは開講しており、授業以外にも、建学の精神にもある『学問の楽しさを知る』場は提供しています。全寮制の環境もあるため、昼夜を問わず異学年の生徒が共に学び考えるという交流ができているのが、海陽学園の最大の強みです。今回、出場する2人に、もっとも影響を受けた人物はと聞くと、私たち教員ではなく『神田先輩』と即答していました」

 数学オリンピックだけではない。2019年3月に行われた「科学の甲子園全国大会」(国立研究開発法人科学技術振興機構が主催)などで同校は優勝しており、こうした教育環境が科学オリンピックやコンテストで大きな成果をおさめたといえよう。

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