渡部愛は日本女子プロ将棋協会(LPSA)のエースであり、また盤外では失敗の絶えないドジっ子として知られる。先輩の女流棋士たちからは「まなちゃん」と呼ばれている(撮影/戸嶋日菜乃)
渡部愛は日本女子プロ将棋協会(LPSA)のエースであり、また盤外では失敗の絶えないドジっ子として知られる。先輩の女流棋士たちからは「まなちゃん」と呼ばれている(撮影/戸嶋日菜乃)

 AERAの将棋連載「棋承転結」では、当代を代表する人気棋士らが月替わりで登場します。毎回一つのテーマについて語ってもらい、棋士たちの発想の秘密や思考法のヒントを探ります。渡辺明九段、「初代女流名人」の蛸島彰子女流六段、「永世七冠」の羽生善治九段らに続く27人目は、日本女子プロ将棋協会のエースで「元女流王位」の渡部愛・女流三段です。発売中のAERA 2023年6月12日号に掲載したインタビューのテーマは「将棋以外の楽しみ」。

【写真】インタビューを受ける渡部愛・女流三段

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 渡部愛の趣味はサッカー観戦。北海道コンサドーレ札幌の熱烈なサポーターだ。

「子どもの頃、親がサッカーの日本代表戦とかをテレビでよく見てて、その影響でサッカーの試合を見るのはすごく好きになりました」

好きな選手は?

「基本的には箱推しで、コンサドーレはチーム全体を応援しています。最近、調子がだんだん上がってきてます」

日本代表の試合は?

「ワールドカップは深夜まで全部見ました。コンサドーレはサイドから攻撃することが多いので、代表戦も右の伊東純也選手、左の三笘薫選手、サイドからの攻めに注目して見ています。端攻め? そうですね(笑)」

ツイッターには、観戦で各地を訪れた様子がアップされている。

「現地まで行くのは、最初はハードルが高くてなかなかできなかったんですけど、行き始めたらはまりました。すごく元気をもらえるのと、移動で歩いたりするのがいい運動になります」

「いまは空いてる土日とか、仕事終わりに時間があれば、コンサドーレがアウェーで関東に来たときに、あちこちのスタジアムを訪れています。4月には埼スタ(埼玉スタジアム2002)に行きました。都内で昼ぐらいまで指導会があって、15時からキックオフで。電車に1時間ぐらい乗って、最寄りの駅からは歩くと20分ぐらいかかります。ダッシュで走りました」

日本国内で、これから訪れてみたいところは?

「鳥栖です。佐賀県にはまだ行ったことがなくて。福岡から近いらしいので、土日で福岡と鳥栖、2試合連続で見て帰るコースが理想だと思っています。でもなかなか機会がなくて」

わたなべ・まな/1993年6月26日生まれ。29歳。北海道帯広市出身。日本女子プロ将棋協会所属。2018年、初タイトルの女流王位を獲得し、女流三段に昇段。趣味はサッカー観戦(撮影/戸嶋日菜乃)
わたなべ・まな/1993年6月26日生まれ。29歳。北海道帯広市出身。日本女子プロ将棋協会所属。2018年、初タイトルの女流王位を獲得し、女流三段に昇段。趣味はサッカー観戦(撮影/戸嶋日菜乃)

 2023年2月。渡部は飛行機に乗り、コンサドーレのホーム開幕戦がおこなわれる札幌ドームに駆けつけた。そこでアクシデントに気づく。

「リュックの一番上に入れていたはずのユニホームがないんです。しびれました(苦笑)。早朝にリュックをしょって家を出て、羽田空港に向かう電車に乗ろうとして。けっこう時間がギリギリだったので、走ってる間にリュックが半開きになってしまって、どこかでユニホームを落としちゃったみたいです。警察とかにもいろいろ電話をかけてみたんですけど、届いてなくて。その後、女流王位リーグでたまたま残留できたのと、女流名人リーグに入れたので、自分へのご褒美でもう一度ユニホームを買い直しました」

サポーターの鑑ですね。

「でも痛すぎる出費でした(苦笑)」

(構成/ライター・松本博文)

※発売中のAERA2023年6月12日号では、対局前日にやらかしてしまった大失敗についても語っている。2021年春から今春までのこの連載をまとめた『棋承転結 24の物語 棋士たちのいま』(朝日新聞出版)が6月20日に出版予定

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松本博文

松本博文

フリーの将棋ライター。東京大学将棋部OB。主な著書に『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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