ライフル銃を修理する佐藤さん。「狩猟免許を取るために補助金を出す自治体もある。銃に怖いイメージを持つ人もいますが、使う人次第です」(撮影/編集部 福井しほ)
ライフル銃を修理する佐藤さん。「狩猟免許を取るために補助金を出す自治体もある。銃に怖いイメージを持つ人もいますが、使う人次第です」(撮影/編集部 福井しほ)

 長野県中野市で起きた4人殺害・立てこもり事件で、容疑者は銃を所持、犯行に使用した。今回の事件は、銃規制をめぐる議論に一石を投じそうだ。AERA 2023年6月12日号の記事を紹介する。

【銃が使われた主な事件はこちら】

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 田園風景が広がる集落で2人の男性警察官が銃撃されて命を奪われた。長野県中野市で発生した立てこもり事件で青木政憲容疑者(31)が使用したのは、サバイバルナイフとハーフライフルだった。

 事件が起きたのは、5月25日の夕方。青木容疑者は女性2人をナイフで刺すなどし、通報を受けて駆けつけた警察官2人に向かって発砲した。この間わずか10分ほどだったという。

 その後、容疑者は母親やおばを人質に自宅に立てこもり、約12時間後に投降。身柄を確保された。

 青木容疑者は、県公安委員会から銃4丁の所持の許可を受けており、そのうちの1丁を使用したとみられている。

■繰り返される議論

 警察庁などによると、2022年の猟銃と空気銃の許可所持者は約8万6千人。許可丁数は猟銃が約15万丁、空気銃が約2万丁だった。銃を使った事件が起きるたび、その規制をめぐりさまざまな議論が繰り返されてきた。事件翌日には、谷公一国家公安委員長が「銃の取り扱いも含めて対応することになろうと思う」との見解を示すなど、規制強化の動きもありそうだ。

「佐世保の事件が起きたときには銃の所持者全員に一斉調査がありました。今回も似たようなことがあるかもしれません」

 そう話すのは、埼玉県で猟銃専門店「豊和精機製作所」を経営する佐藤一博さんだ。2007年、長崎県佐世保市のスポーツクラブで男が散弾銃を乱射し、2人を射殺。6人が負傷し、男はその後自殺した事件を受け、銃規制は厳格化。狩猟免許の取得や銃の所持許可を得るときに必要な医師の診断書の作成が精神科医限定になった(現在はかかりつけ医でも可)。

「今回の事件では、クマなどを撃つときに使うスラッグ弾を使ったと言われていますが、すでに警察からスラッグ弾を何発持っているかという問い合わせを受けた人もいます」(佐藤さん)

■根本的な対策を

 規制で事件を防ぐことはできるのか。日本大学危機管理学部の福田充教授は、「根本的な解決にはならない」と指摘する。

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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