大宮エリーさんと山崎直子さん(撮影/大野洋介)
大宮エリーさんと山崎直子さん(撮影/大野洋介)

 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。今回は宇宙飛行士の山崎直子さんが宇宙に行ったときの話を伺いました。

*  *  *

大宮:宇宙に行ったときは、どういう感覚なんですか。

山崎:ロケットで打ち上げられるのが8分30秒間なんですけど、最後の約30秒間に3Gがかかるんですよね。自分と同じ体重の人が3人乗ってるくらいなので、結構重くて。深呼吸しながらいくんですけど、エンジンが止まると、急ブレーキがかかったみたいに、前につんのめる感じが、シートベルトをしてても分かるんですね。

大宮:はい。

山崎:それが落ち着くと、床にたまっているほこりがまず一面に浮かび上がって、キラキラって光ってるんですね。あ、無重力だなっていうのを感じながら、シートベルトを外すんです。そしたら、本当に浮くんだってちょっとびっくりしました。浮くと、何ていうんですかね、すごくね、懐かしい感じが私はして。エリーさんのスキューバダイビングと同じだと思うんですけど。

大宮:へえ。どんな感じだろう。私は海の中で、子宮の中なのかなとか、生物は太古は海から来たのかなと感じたんですけど。

山崎:ゆったりと浮いているというのは海の中の感覚と近かったですね。

大宮:面白い。新しいところに行ってるのに、何か懐かしいっていう感じがするんだ。

山崎:もっと感覚的な話で申し訳ないですが、細胞一つ一つが懐かしがっているというか、喜んでいるような、そんな感じでした。

大宮:その表現、独特ですね。でもすごくしっくりきました。

山崎:ああ、うれしいです。エリーさん、宇宙に行ってください。一緒に語り合いたいです。

大宮:いやいや、私はいいです(笑)。怖がりだから。でも、山崎さんの体験談で、はじめて行ってみたいなと思いました。

山崎:宇宙ではこいでも進まないので、そこは水の中と違うんですけど、慣れてくると、指で壁を押すだけで、スーッと魚のように動ける。泳げるようになってくるんですよね。

大宮:へえ。

山崎:いろんな研究者の話では、重力って三半規管が感知してるっていうけど、それだけじゃなくって、細胞1個1個レベルが、重力を感知する力がある、と。

大宮:はい。

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