やまおか・あさこ/1974年、大阪府出身。新卒で主婦と生活社に入社。女性誌、生活実用誌などで編集長を経験。2017年、株式会社ハルメクに入社。21年からハルメクHD取締役(写真:本人提供)
やまおか・あさこ/1974年、大阪府出身。新卒で主婦と生活社に入社。女性誌、生活実用誌などで編集長を経験。2017年、株式会社ハルメクに入社。21年からハルメクHD取締役(写真:本人提供)
この記事の写真をすべて見る

 雑誌の休刊が相次ぐなか、部数を約14万部から44万部に伸ばした女性誌「ハルメク」。編集長の山岡朝子さんは、いかにして過去最高の部数を実現したのか、そして見据える紙媒体の未来とは──。AERA 2023年5月29日号から。

*  *  *

 2017年夏、シニア女性をターゲットにした女性誌「ハルメク」の編集長になりました。当時の部数は約14万部。どうすれば売れるのか。定期購読誌ならではの膨大な読者データに加え、毎月2千枚以上返ってくる読者はがき。それらを元にニーズを徹底調査しました。

 その結果、気づかされたのは、今の60代、70代は自分のことをシニアだなんて全く思っていないということです。仕事を続けていたり、子どもや夫のサポートに忙しかったり。アクティブで、「現役感」が強いのです。

 そこで読者を「シニア」ではなく「大人の女性」ととらえ、特集のラインアップを再考。年金や健康といった従来型のテーマにファッションとヘアスタイルの特集も加えて幅を広げました。若々しく明るい誌面を意識しつつも、髪にボリュームが出なくなった時の対処法など、この世代ならではの身近な戸惑いに徹底的に応え続けたところ、部数は順調に伸び、22年上期は過去最高の月平均44万部(日本ABC協会調べ)を達成しました。

 定期購読誌の強みは、固定ファンが多いことですが、一方で今の読者だけを意識していると、1年後には読者と一緒に一つ年を重ねてしまいます。やがて内容が高齢化して、新しい読者が入ってこなくなる。新陳代謝を常に意識しながら企画を立てています。

 さらに、これからターゲットとなるいまの50代は、紙とデジタルの境目の世代。そこを見据え、昨秋、ウェブサービス「ハルメク365」をオープンしました。名医の解説動画やオンラインイベントがあり、ただテキストを見せるだけではない価値を発信中です。

 私はウェブによるコンテンツ提供には課題も感じています。結局は、その人の興味関心に基づいてパーソナライズされた「想定内の空間」だな、と。今まで紙媒体が担ってきた、人生を変えるような発見や新しい流行は生まれにくいのではないでしょうか。これからの時代、情報だけの紙媒体は淘汰されるけれど、発見や提案の発信地としての役割は大きく、なくならないと考えています。

 シニア女性は約2千万人。多くの方に「年を重ねるってこんなに楽しいんだ」という新しい気づきを得てもらえるコンテンツをこれからもお届けしたいと思っています。

(構成 編集部・古田真梨子)

AERA 2023年5月29日号

暮らしとモノ班 for promotion
【フジロック独占中継も話題】Amazonプライム会員向け動画配信サービス「Prime Video」はどれくらい配信作品が充実している?最新ランキングでチェックしてみよう