3月17日に行われたユースエレクション(模擬選挙)の様子(写真提供/クロサーリ総合学校)
3月17日に行われたユースエレクション(模擬選挙)の様子(写真提供/クロサーリ総合学校)

「フィンランド人はみんな学校で(政治に関する)ベーシックな知識を学んでいますし、模擬選挙でも投票したことがあります」

 父親とともに投票所を訪れた19歳の男性も、今回が初めての投票だという。

「ソーシャルメディアを見たり、父や友人と話し合って(投票先を)決めました」

 家族や友人と政治の話をすることが、ここではごく当たり前のことなのだ。最終的な投票率は72%。政治はみんなのもの、という意識がその根底に流れているように感じる。

 1906年、ヨーロッパで初めて男女同時に参政権(被選挙権含む)が与えられたのはフィンランドだ。翌07年には19人の女性議員が誕生した。現議会では女性議員の割合は47%。大臣も19人のうち11人が女性だ。政党の党首を務めるのも女性のほうが多い。選挙時点での最年少議員は24歳、最高齢議員は72歳だ。

 何の努力もせずに、若者の政治参加への意識が醸成されているわけではない。前回2019年の総選挙では若年層(18~24歳)の投票率は55%だったが、前々回の15年よりも8.2ポイント上昇した。

 若者の社会参加を促すための大きな役割を担っているのが、フィンランド若者協議会「アッリアンシ」。年間予算は250万ユーロ(約3億6千万円)で、うち65%が教育文化省から下りている予算だ。

「社会参加は自動的に身につくものではない。教えてもらう必要があります。それもなるべく早い年齢から始めるのがいい」

 と説明するのはアッリアンシ上級顧問のヤルッコ・レヒコイネンさん。

「例えばある幼稚園では、5歳児に投票させてその日どの公園に遊びに行くかを決める、といったことをしています」

 全国の9年生(日本の中学3年生に当たる)を対象に行う「ユースエレクション」(模擬選挙)をコーディネートするのもアッリアンシだ。選挙期間中に、実際の政党・候補者に対して模擬投票を行うもので、全国的な民主主義教育のビッグイベントだ。今回の選挙では全国800校が参加し、9万人の生徒が投票した。投票所は学校だが、一連の流れは実際の投票とまったく同じように行われる。自分の考えに近い政党や候補者を知ることができる「選挙コンパス」(ボートマッチ)や、投票作業に必要な道具などを同団体が用意してくれるので、各学校側が大きな負担を負うことはない。

■SNSの情報見極める

 集計された結果は、選挙期間中にメディアなどで発表される。今回はフィン人党が得票率1位という結果になったが、各政党にとっては、若い世代の意向を確認し、SNSなどを中心としたキャンペーンがうまくいっているのか知る機会にもなる。

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