■自分一人を生かすのに必死、出産は考えていない

──塾や予備校に行かなくてもいいように学校でしっかり教えるという地方の例は、都市部でも変えていける可能性のある部分なのかなとも思いました。一方で日本でも韓国でもそもそも結婚しないという選択をする人も増えています。

金甫美(キムボミ)(40、ソウル):私は結婚もせず、子どももいません。20代前半から仕事を始めて、今も同じ仕事をしています。以前は30歳になる前に結婚して子ども2人を産むのがいいと思っていましたが、自分ひとりで働いて暮らしていけるという気持ちに切り替わった時から心が軽くなりました。結婚自体を恐れていた面もあります。近年は価値観が変わってきて、結婚しないという選択も一般的になってきました。韓国でタレントとして活動しているさゆり(藤田小百合)さんが、未婚の母となって話題になりましたが、そういう選択肢もあるんだと思いました。

田宮(29、東京都練馬区、仮名):私は演劇をやっているんですが、アルバイトしながらなので経済的には自分一人を生かすのに必死という状態です。結婚はまだしも、出産はまったく考えていません。役者仲間は30~50代が多いですが、結婚はしても、子どもとなると経済的に厳しいという状況です。表現をする立場としては、出産や子育ても経験したいという思いはあるけど、経験したいだけで責任は負えないので。私は山形出身で、正月やお盆に田舎に帰ると両親や親戚から子どもを産むことを勧められます。両親に孫の顔を見せてあげたい気持ちはありますが、今は自分のやりたいことで精いっぱいで、現実的には考えられません。

趙:先ほどの李さんの話に補足すると、韓国も日本も子どものために早退したり、休暇を取ることが周りに迷惑をかけると感じるところがある。心理的負担の部分で制度が早く変わってほしいと思いますが、女性に負担が大きくかかっているのでは、とも思います。子どものために男性が早退する姿は、私は見たことがありません。

──少子化問題は男性の問題でもあります。

趙:十数年前、スウェーデンに行ったことがあります。下がっていた出生率が回復し始めていて、その理由を探るのが目的でした。例えば子どもが病気など緊急の場合、韓国ではまず母親に電話をかけますが、スウェーデンでは父親と母親、交互に連絡がいくようになっている。子どもを学校に連れていくのも父親だったり、すごく自然体で男性が子育てに参加していました。

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