座談会参加者たち(通訳含む)。仕事と育児の両立の難しさや、結婚・出産に関する価値観の変化、都市と地方の差など、女性を取り巻く日韓共通の現状が見えてきた(編集部・深澤友紀)
座談会参加者たち(通訳含む)。仕事と育児の両立の難しさや、結婚・出産に関する価値観の変化、都市と地方の差など、女性を取り巻く日韓共通の現状が見えてきた(編集部・深澤友紀)

 少子化が進む日本と韓国。AERA4月10日号では韓国の出生率0.78の背景を紹介したが、教育費の高騰や大都市一極集中、男女の賃金格差など日本とも共通点が多い。日韓の女性たちが悩みを語り合った。AERA 2023年5月1-8日合併号の記事を紹介する。

【写真】娘と夫と一緒に公園を散歩する李恩雅さん

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 急激な少子化が、日本でも韓国でも「国家存亡の危機」と言われるほど喫緊の課題になっている。1人の女性が一生の間に産む子どもの数を示した合計特殊出生率は2022年、日本で1.27程度、韓国で0.78を記録した。様々な要因が指摘されるが、女性たちを取り巻く状況はどうなのか。4月上旬、20~40代の女性7人(日本4人、韓国3人)がオンラインで語り合った。

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──司会の成川です。先日、日本を上回る勢いで少子化が進む韓国で、その背景を探ろうと取材を始めたところ、70代男性から「子どもを産んでいないあなたに少子化問題について書く資格はない」と言われました。少子化は女性の責任と思っている年配の男性もまだまだいるのかなと思います。私と同じ既婚で子どものいない2人から、子どもを産む、産まないについての考えを聞いてみたいと思います。

趙在順(チョジェスン)(43、ソウル):27歳の時に結婚し、当初から子どもを産まない計画だったわけではありません。当時の韓国は子どもを産むのが当然という文化だったので。夫の留学についてドイツへ行き、そこで過ごすうちに子どもを産むという選択が必須ではないと感じるようになりました。帰国して働きながら、子どもが病気の時も夜遅くまで職場から帰れず困っている女性を見て、「産んではいけない」という意識に変わりました。

齊藤仁子(45、横浜市):私は36歳と、結婚が遅かったのもあり、最初から子どもを産むかどうか夫と話し合っていました。私はアクティブな性格で、バイクに乗ったりキャンプをしたり、外に出ていくのが好きで、家庭的なタイプではありません。お互いに子どもは自分たちの人生には必要ないかもねという感じで結婚しました。

 ただ、一度だけ子どもを産まなかったのを後悔したことがあります。昨年12月に義母ががんで亡くなる少し前、意識が曖昧な状態で「仁子、赤ちゃんできたのか」とうわ言を言ったんです。それまで何も言わなかったけど、本心は孫がほしかったんだと知って、申し訳ない気持ちになりました。

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