国谷:「30年までに」というSDGsの目標達成はコロナパンデミックやウクライナ戦争で厳しい状況です。SDGsが国連で採択された15年以前の状態に戻ってしまったものもある。これまでのやり方を続けていたら地球環境も、私たちが作ってきた文明も平和もますます不安定化していくという認識を、すべての人たちが共有しなければならないと思います。

 15年に1.5度目標を定めたパリ協定もSDGsも、目標はともに「30年までに」。いまがちょうど折り返し地点です。そういった喫緊の課題があるのに、侵略などしている場合かとプーチンに叫びたい気持ちです。

 ただ、この戦争で資源価格が上がったり、サプライチェーン(供給網)の混乱で食料が高くなったりで「食料安全保障もエネルギー安全保障も簡単にいまのあり方で確保されるものではない」ことに私たちが気づく「目覚ましコール」にはなったのかなと思います。

 戦争が人の命を奪い、人権を踏みにじるものであることはもちろんですが、ウクライナ戦争は「気候変動を何とかしなければ」と叫ばれる状況で起きたことで、「戦争とは人命のみならず地球そのものを破壊する行為である」ことを深く考えさせる初めての戦争になっているとも思います。

斎藤:ロシアとウクライナにおける限定的な戦争であるにもかかわらず、グローバル資本主義の下でさまざまなものがつながり、影響も地球全体に及んでいく。そのことを実感します。世界全体の社会的な弱者にとっての死活問題ですし、この惑星全体の環境にとっての危機になってしまったこの戦争をとにかく一刻も早く、私たちが終結させられるかどうか。突きつけられているのは本当に逼迫(ひっぱく)した緊急の課題です。

(構成/編集部・小長光哲郎)

AERA 2023年3月20日号より抜粋