井口理さん(右)と伊藤ちひろさん(撮影/山本倫子)
井口理さん(右)と伊藤ちひろさん(撮影/山本倫子)

 King Gnuのボーカル、井口理さんがホストを務めるAERAの対談連載「なんでもソーダ割り」が8カ月ぶりに特別編として復活! ゲストの伊藤ちひろさんは井口さんの初主演映画「ひとりぼっちじゃない」で監督デビューを果たしました。AERA 2023年3月13日号に掲載した対談の後半をお届けします。

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井口:どうして俺にススメ役をオファーしてくれたの?

伊藤:行定(勲)さんが監督した「劇場」(2020年)を見て、井口君の芝居がすごく好きだったの。才能あるカリスマの役って難しいんだけど、佇(たたず)まいでそれを表現できていて。何よりも、品があった。

井口:品、かあ。

伊藤:井口君って、おかしなことをやっていても品でコーティングされてるんだよね。だから色々許されてる感じがする(笑)。

井口:「品があれば許される」は俺のウラ座右の銘かも。

伊藤:面白い魅力だと思う。それが「劇場」での佇まいから感じられた。実際に会って話してみたら、めっちゃ変な人だなと思ったけど。

井口:ははは! でも自分的には「劇場」の芝居は全然うまくできなかったと思っていて。バンドのメンバーとか周りの人たちからも不評だったし。「緊張して目がバキバキになってんじゃん」って。

伊藤:本人を知りすぎている人からすると違和感があったのかもね。

井口:うん。だから、ちひろさんから褒められた時、「あんまり良くないと思っていた芝居を、どうしてこの人は褒めてくれるんだろう?」って不安になったもん(笑)。

伊藤:いや、あの芝居はすごくいいと思う。私の場合は、井口君の歌声は知っていたけど、パーソナルな部分についてはよく知らなかったから。「劇場」が公開される数カ月前に「情熱大陸」に出ている井口君を見て、「この人、こんなにうまくいってるのにどうして自分に自信がない感じなんだろう?」って思ったのと、行定さんから「井口は自分の芝居に自信がないみたい」とは聞いていたんだけど、それ以上のことは知らなくて。

井口:俺の自信のなさが良いほうに作用したんだね。

伊藤:そうだと思う。そういう井口君の人となりも含めて、ススメの役をお願いしたいと思った。だから、もしススメというキャラクターを前提にして探していなかったら、私は役者としての井口君と出会わなかったかもしれない。もちろん今は井口君がどんな力を秘めているかよくわかっているから、今後も一緒に撮りたいとか、こんな役もできるんじゃないかとか色々考えられるけどね。

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