子育てには親の心理がさまざまな影響を及ぼす(写真はイメージです/gettyimages)
子育てには親の心理がさまざまな影響を及ぼす(写真はイメージです/gettyimages)

 「あっ、危ない!」

【写真】日本とこんなに違う!アメリカのシンプルなお子さまランチ

 そう思ったときにはもう遅く、息子はころりと尻をついていました。月曜日の朝、幼稚園の下駄箱で靴をはき替えようとしていたときのことです。年少の息子は未だに毎朝「ようちえん行きたくない!」と駄々をこね、園に向かう車の中でも「なんでいつもようちえん行かなきゃいけないの」と文句を垂れ、いざ着いても下駄箱の前で上ばきをはくのを渋ります。この日も通路でぐずぐずしていたところ、他の子のお父さんが息子に気づかずぶつかってしまったのでした。

 強く転がったわけではありませんが、登園したくない気持ちに驚きと動揺が混ざったのか、息子は大声で泣きはじめました。お父さんは平謝りに謝ってくれます。私も負けじと頭を下げ、そして息子を責めました。「いやいやこちらこそすみません、〇〇(息子)がぼうっと突っ立っているから悪いんですよ。ね、〇〇くん、早くうわばきはかないからいけないんだよ!」

 思えばこうしたシチュエーションで、私は必要以上に相手に謝る傾向があります。昔から人の目が気になるタイプでしたが、子どもができてからさらに拍車がかかりました。自分のせいで子どもが嫌われたらどうしようとか、謝罪もできない非常識な親だと言われたら嫌だ、などという恐れがあるのだと思います。そしてそれらの恐れの根底に、「あの家の子はやっぱりハーフだから」と思われたくない、という意地があります。

 我が家の子どもたちは日本とアメリカのいわゆる“ハーフ”で、2年前にアメリカから日本にやってきました。日本に本帰国してからは頻繁に「ハーフですか?」と訊かれ、見た目や言動を「やっぱり日本人らしくないね」とジャッジされることもあります。親の自分が「日本人らしくない」と言われるのはまったく気にならないのですが、子どもを「日本人らしくない」と言われると気持ちのどこかに影が差します。彼らは日本国籍を持ち日本語と日本文化を解するれっきとした日本人なのですから。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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「やっぱりアメリカのランチは…」という偏見