長女がレスパイトで入院した病棟で節分のイベントがあり、お土産に持ち帰ったものです。保育士さんが全員にお面や豆まきセットを作ってくれたそうです(撮影/江利川ちひろ)
長女がレスパイトで入院した病棟で節分のイベントがあり、お土産に持ち帰ったものです。保育士さんが全員にお面や豆まきセットを作ってくれたそうです(撮影/江利川ちひろ)

「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか? 障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害のある子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出合った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。

* * *

 2月3日は節分です。

 今年は、医療的ケアが必要な長女は、2月1日から7日まで大学病院のレスパイトケアに行っていました。レスパイトには「休息」という意味があり、常時介護が必要な人が施設を利用してケアを受けられ、介護者の負担軽減やきょうだい支援などを目的に利用することができるシステムです。

 お世話になっている病棟では四季折々のイベントが開催されるのですが、節分もそのひとつのようです。お迎えにいくと、手作りのかわいい鬼のお面をつけてもらい、折り紙でつくった豆を紙コップに入れて豆まきに参加している長女の写真をいただきました。

 毎月コンスタントにレスパイトケアを利用しているため、長女は自宅でみせる笑顔と同じように、とてもリラックスしている表情です。長女が慣れていることはもちろん、先生や看護師さんや保育士さんやクラークさんもみんな長女の好みを分かってくれていて、安心して預けることができる場所です。

朝の会や療育、余暇の時間も

「大学病院に入院」というと、ずっとベッドに寝たままでいるように思われるかもしれませんが、病棟内では朝の会があったり、保育士さんと過ごす療育の時間があったり、リハビリをしてもらったり、昼食後にみんなでDVDを観たりと、日常生活に近い状態で過ごしているようです。長女は今までに4カ所の施設にお世話になりましたが、どこも同じようにとても明るくて優しい場所でした。

 残念ながら医療的ケアが増えるたびにひとつずつ受け入れ先が減り、人工呼吸器が必要になってからは自宅から車で1時間程かかるこの病院しか預け先はなくなってしまったのですが、遠くても「ここなら」と思える病院に出会えたことは、とてもラッキーなのだと思っています。

著者プロフィールを見る
江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

江利川ちひろの記事一覧はこちら
次のページ
地域によってはレスパイト受け入れ先が県内にない