AERA 2022年12月5日号より
AERA 2022年12月5日号より

 物価は上がっても給与はなかなか増えないだけに、今までと同じ暮らしを続けていると出費はかさむばかり。特にライフラインの値上げは深刻だ。電気代を苦労せず節約できるテクニックを紹介する。2022年12月5日号の「家計防衛」特集の記事から。

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「やけに電気代が高い」「先月より3千円上がった……」などの言葉が、この夏から目立ち始めた。例年より多くエアコンを使ったならまだしも、去年と同じように暮らしていて数千円アップは当たり前。大家族世帯からは月1万円以上の値上がりという声も聞く。テレワークで在宅時間が増えた人は「これまで昼間の電気代は会社持ちだったのね」と今さら気づく。

 電気代上昇の背景について、日本エネルギー経済研究所の小笠原潤一さんに教わった。

「発電に使われる燃料を大別すると原油、石炭、LNG(液化天然ガス)の3種類。原油は2020年9月から22年9月の2年間で3倍以上に上がりました。同期間で石炭は7倍、LNGは5.4倍に達しています」

 発電では費やした燃料と同じ量の電力が生み出されるわけではない。どうしても無駄は出るので「燃料>電力」となる。

「日本の電気はLNG発電が多いのですが、効率性は50%程度。ざっくり言うと燃料代が5倍になると発電における燃料コストが10倍になるわけです」

■超円安が追い打ち

 資源の大半を輸入に依存する日本に、為替相場で進んだ円安が追い打ちをかけた。

「原油をはじめとする化石燃料は原則としてドル建て価格で取引されています。1ドル=110円程度だった為替相場が150円近くになるだけで、燃料価格自体が何も変わらなかったとしても3~4割も調達コストが高くなってしまいます」

 今後、よほどの暖冬や急激な円高にならない限りは燃料高が電気代の上昇圧力となる。

「燃料価格が上昇を始めたのは21年の秋頃からで、特にLNGはその傾向が顕著でした。欧州を中心に、二酸化炭素を大量排出する石炭火力を廃止しようという動きが活発化したことが一因です。石炭や石油と比べ、二酸化炭素の排出量が低いLNGへの依存度が高まりました」

 欧州では風力発電へのシフトも進められていたが、昨年は期待通りの風が吹かなかった。その結果、不足分をLNG発電によって補う必要が生じた。

「ちょうどその頃、中国が高値を承知でLNGを買い漁り、必要に迫られている欧州も追随せざるをえませんでした。そんな中、ロシアによるウクライナ侵攻。欧州諸国では冬場の需要に向けて備蓄を増やせとの国家規制まで入り、LNG価格は高騰しました。日本は、こうした騒動に巻き込まれた格好です」

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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大西洋平

大西洋平

出版社勤務などを経て1995年に独立し、フリーのジャーナリストとして「AERA」「週刊ダイヤモンド」、「プレジデント」、などの一般雑誌で執筆中。識者・著名人や上場企業トップのインタビューも多数手掛け、金融・経済からエレクトロニクス、メカトロニクス、IT、エンタメ、再生可能エネルギー、さらには介護まで、幅広い領域で取材活動を行っている。

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