AERA 2022年11月21日号より
AERA 2022年11月21日号より

 でも、被害者なんです。それを堂々と言っていい。これだけ性犯罪が多い国ですから、誰もが被害者になりえる。だから周囲は、レッテルを貼らずに、フラットに向き合うべきです。被害者を傷つけてはならないと思うあまりに、「無理せず、話せるだけでいいですよ」と言ってしまいがちですが、その配慮も何か違う。精神的に不安定である前提になっていることを嫌がる人は多いと思います。

 周囲はまず、被害を語り始めた強さに敬意を持ち、ちゃんと受け止めることが大切です。そして、どうしたいかを聞く。支援者が「ケアをする人」という立ち位置にならず、互いに尊厳を持つ個人として対等に付き合うことが重要だと思います。

 日本には「加害欲」を肯定するコンテンツがあふれています。最近知ったのですが、AVに「わからせ」というジャンルがあります。レイプをして、女をしつける、わからせるということです。すごい言葉ですよね。同時に、文脈がないのに意味がわかってしまう社会であるということに愕然としました。世界を見渡せば、例えばオーストラリアはレイプはコンテンツとしてNGですし、幼児や10代の女性を性的対象とする表現を禁じている国もあります。日本は危機的状況にあると思います。

 根底にあるのは、ジェンダー平等意識の遅れと、強い男女の役割分業意識です。男性は家事・育児をせず、女性は睡眠時間を削って働く。男性は性欲だけではなく、生活も女性にケアしてもらうことが当然とされているのです。男と女の関係性が固定されていることと、セクハラや性加害がなくならないことは無関係ではないでしょう。

 社会の構造を変えていかなければなりません。ジェンダーやハラスメントに関心が高まっている今こそ、頑張らなければいけないですね。

きたはら・みのり/1970年生まれ。作家・コラムニスト。著作に『性と国家』『奥さまは愛国』(ともに共著)など

(構成/編集部・古田真梨子)

AERA 2022年11月21日号