しみず・あきこ/1970年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専門はフェミニズム/クィア理論。共著に『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』など。解説を務めた『トランスジェンダー問題』が10月3日に発売予定p(hoto 写真映像部・加藤夏子)
しみず・あきこ/1970年、東京都生まれ。東京大学大学院総合文化研究科教授。専門はフェミニズム/クィア理論。共著に『ポリティカル・コレクトネスからどこへ』など。解説を務めた『トランスジェンダー問題』が10月3日に発売予定p(hoto 写真映像部・加藤夏子)

 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

【写真】清水晶子さんの著書『フェミニズムってなんですか?』はこちら

『フェミニズムってなんですか?』は、清水晶子さんの著書。フェミニズムとは女性たちの尊厳や安全を軽んじる文化を変革し、女性たちの生の可能性を広げようとするもの──そのためにフェミニズムはなにを考え、主張し、なにをしてきたのか。性と身体、性暴力、結婚、スポーツ、ケア、インターセクショナリティーなどさまざまなトピックから、「フェミニズムを考え」「フェミニズムをやってみる」ことを後押しする。清水さんに同書にかける思いを聞いた。

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 日本でも日常的に「フェミニズム」という言葉に触れるようになった。男女の賃金格差など社会的な問題ばかりではなく、広がりを見せている。だが議論の幅広さに、自分が「フェミニズム」をどこまで理解しているのか、心もとなくなることも。清水晶子さん(52)が書いた本書は、こうした疑問にこたえるものだ。

「基本的なことでいえば、フェミニズムが扱う問題は性別や身体、セクシュアリティー、欲望に関わる事柄です。ただそれらに一切関わらない、人間の活動はありませんよね。法制度や労働の問題はもちろん、スポーツや映画、家事、ファッションなど、そこに身体をもって性別化されている以上、絶対にフェミニズムは関わってきます。だから対象の幅が広くなるんです」

 WEB連載「VOGUEと学ぶフェミニズム」をもとにまとめた本書は、基本的な考えから大きな出来事、フェミニズムが抱える困難まで、自然な流れで紹介されている。清水さんは、はじめに『フランケンシュタイン』の著者、メアリー・シェリーの母をフェミニズムの先駆者としつつ、#MeToo運動までの流れを説明。そこから性教育、性暴力、夫婦別姓や同性婚、「ケア」の問題、女性リーダーと、扱うテーマは広がっていく。

「多くの社会では、性別に関わる不平等や抑圧はまず女性側に強くかかってきます。けれどもこれは男性だけに関わる問題ではないし、身体や欲望のあり方を考えるときに性別だけが問題になるわけでもない。たとえばアメリカでは『アフリカ・アメリカンの男性性』について考えるのは明らかにフェミニズムのイシューでもあります。性差別と人種主義が歴史的にどのように結びついてきたか、それが男性性や女性性をどう形づくってきたのか、という問題は、明確にフェミニズムに関わる問題だからです」

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