今年3月、二松学舎大学付属高校でマネックス・ユニバーシティが出張授業。金融経済の基礎や株式市場の仕組みを説明した(撮影/小黒冴夏)
今年3月、二松学舎大学付属高校でマネックス・ユニバーシティが出張授業。金融経済の基礎や株式市場の仕組みを説明した(撮影/小黒冴夏)

 今春から高校生の教科書に導入された資産形成の授業。未だ検討中の状態や準備が整っていないという学校が多い中、少しずつ授業に取り入れている学校もある。AERA 2022年9月5日号の記事を紹介する。

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 品川女子学院は金融教育事業を手がける企業などに協力を仰ぎ、独自に資産形成の授業を行っている。しかし、金融教育は都会の中高一貫校の専売特許ではない。茨城県北部の県立常陸大宮高校は普通科と商業科、機械・情報技術科の3学科で3学年合計164人が在籍するが、金融教育の分野では名の知られた存在だ。

 常陸大宮高校では2016年、生徒が“社長や株主”として特産品販売などを手がける「高校生社長ホールディングス株式会社(当初社名はHIOKOホールディングス)」を設立した。19年からは連携協定を結んだアイザワ証券に口座を開き、会社の内部留保を株で運用している。銘柄は生徒たちが「投資委員会(課題研究)」で決める。同校商業科教諭の横山治輝(はるき)さんは証券会社出身だ。

株式会社設立で現実味

「家庭科の教科書にある貯蓄、クレジットカード、キャッシュレスなどの知識も必要ですが、もっと大事なのは生活設計、生涯設計をできる能力です」

 株式会社の設立やアイザワ証券との提携は、生徒に現実味を持たせる仕掛けづくりのためだという。そのうえで、「将来投資するか決めるのは生徒たちです。働きながらお金を増やすという選択肢を教えて社会に送り出すのが大人の役割です」。

 資産形成を教えることについて最も熱心なのは、日々お金と向き合う金融業界だろう。

 マネックス証券は社内に金融教育専門の部署「マネックス・ユニバーシティ」を置き、05年から投資啓蒙活動を続けてきた。最近では東京都の筑波大学付属小学校、二松学舎大学付属高校、青森県の八戸東高校、兵庫県の柏原高校などに看板アナリストの大槻奈那、益嶋裕らを派遣し、“出前授業”を展開した。マネックス・ユニバーシティ室長の福島理(ただし)さんに様子を聞くと、「生徒はメモを取りながら熱心に聞き、質問も出ます。教室の後ろでは先生が並んで授業を見学しています」。

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中島晶子

中島晶子

ニュース週刊誌「AERA」編集者。アエラ増刊「AERA Money」も担当。投資信託、株、外貨、住宅ローン、保険、税金などマネー関連記事を20年以上編集。NISA、iDeCoは制度開始当初から取材。月刊マネー誌編集部を経て現職

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