池上彰、安倍元首相の「国葬」に違和感 「歴史的評価が定まるのはこれから」

銃撃事件

2022/07/29 08:00

池上彰(いけがみ・あきら)/1950年、長野県生まれ。73年にNHK入局。報道記者、キャスターとして活躍。2005年に独立、文筆活動、テレビ出演のほか多くの大学で教壇に立つ(撮影/岸本絢)
池上彰(いけがみ・あきら)/1950年、長野県生まれ。73年にNHK入局。報道記者、キャスターとして活躍。2005年に独立、文筆活動、テレビ出演のほか多くの大学で教壇に立つ(撮影/岸本絢)

 2022年7月8日。安倍晋三元首相が凶弾に倒れた。にわかには信じられない。そんな状況のなか、手製の銃、旧統一教会と自民党、国葬など、さまざまな情報が流れていく。私たちはこの事件をどう捉え、同種の事件を二度と起こさないためにどうすればいいのか。AERA 2022年8月1日号は、ジャーナリスト・池上彰氏に聞いた。

【写真】高校時代の山上容疑者

*  *  *

 今回の事件を戦前の政治テロと重ねようとすると本質を見誤ると思います。安倍晋三元首相が銃撃されたのは参院選の応援演説中で、各局のキャスターやコメンテーターは瞬時に、「政治テロだ」「民主主義への挑戦だ」と発言しました。しかし、これは誤りだったと思います。

 奈良県警は事件当日のうちに、「安倍元首相の政治信条に対する恨みではない」と容疑者の動機にかかわる供述を発表しました。「特定の宗教団体」という情報も出しました。警察がこんなに早く供述内容を流すのは極めて異例です。この段階で「これは政治テロではなく、個人的な恨みが背景にあるのでは」と判断すべきでした。私も当日夜のテレビ番組で、「五・一五事件」や「二・二六事件」といった過去の政治テロを解説しましたが、もう少し慎重であるべきだったと反省しています。

 事件の背景に、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と政治の癒着の問題が浮かんでいます。だからといって、山上徹也容疑者の犯行に酌量の余地はないという前提で話を進めます。驚いたのは、今の若い人たちが統一教会について全く知らないことです。約30年前、週刊誌などが統一教会の霊感商法の問題を盛んに報じました。NHKも報じましたが、代表電話に抗議電話が殺到しました。威嚇です。こうやって言論封殺するのだなと感じました。

 被害者弁護団によると、その後も組織名を変えるなどして活動し被害も続いていた。にもかかわらず、メディアも報じなくなった要因の一つに、オウム真理教事件が挙げられます。1995年に地下鉄サリン事件などを起こし一気に注目を集める一方、統一教会が私たちの視界から消えてしまった。結果論になりますが、80年代の時点で警察が統一教会に毅然(きぜん)と対応していれば、オウム真理教事件も今回の事件も阻止できたのでは、と悔やまれます。オウム事件以降、宗教法人であっても反社会的な組織は取り締まらないといけないという社会的コンセンサスは得られています。メディアも含め、オウム事件の摘発後に改めて統一教会の活動に注目すべきでした。

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