奈良市の近鉄大和西大寺駅前で選挙演説中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相。2度にわたり首相に就き、通算在職の3188日は歴代最長だ(撮影/写真映像部・松永卓也)
奈良市の近鉄大和西大寺駅前で選挙演説中に凶弾に倒れた安倍晋三元首相。2度にわたり首相に就き、通算在職の3188日は歴代最長だ(撮影/写真映像部・松永卓也)

 今回の事件は、2001年の大阪教育大学附属池田小学校での無差別殺傷事件や、08年の秋葉原通り魔事件、最近の電車内の傷害事件の系譜に連なると思います。犯人が孤独の中で恨みを募らせる、「ローンウルフ」(一匹おおかみ)型犯罪の暴発を止めるには、「大人の孤独」にどうやって助け舟を出すのかを真剣に考えなければいけません。自助では絶対に助けられない。昨年2月に創設した「孤独・孤立対策担当大臣」が公助だとすれば、共助の取り組みも必要です。例えば米国社会では、孤独な人がいると、キリスト教のボランティア団体が支えます。つまり宗教です。日本でもカルトの毒を消すのは伝統的な宗教や宗教家ではないか。その重要性が増していると思います。

 安倍さんの国葬をめぐって賛否が分かれています。1967年の吉田茂元首相の国葬が行われたとき本人は政治家を引退していました。一方、首相を退いたとはいえ、自民党の最大派閥を率い、政権にも大きな影響力を与えていた安倍さんを国葬とすることに私は違和感をぬぐえません。確かに安倍さんにはいろんな功績がある。だけど、アベノミクスの評価や集団的自衛権の行使に道を開いた歴史的評価が定まるのは、これから何年か先になると思います。

(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2022年8月1日号