【スリーティアーズ】(photo 写真映像部・高野楓菜)
【スリーティアーズ】(photo 写真映像部・高野楓菜)

 オーナーの新宅久起さんは、英国大使館の広報誌や英国専門誌の編集を30年務め、現地のアフタヌーンティーやティールームを100以上も訪ねた。

 そんな本場を知り尽くした新宅さんが2019年にオープンした店には、こだわりが詰まっている。「正統派」のムードにやや緊張しつつ店を訪ねると、ニッコリと出迎えてくれた。

「うちに初めていらっしゃるお客さんは、みなさん『いままでのアフタヌーンティーはなんだったの?』とおっしゃいます」

 それもそのはず。店では週の2日を仕込みに費やし、営業は金、土、日のみ。スコーンはもとよりスイーツ、ジャムもすべてホームメイド。食材はできるだけ英国産を使っている。

【スリーティアーズ】
アンティークな一軒家でいただく正統派アフタヌーンティーは税込み7920円。予約は8月末まで埋まっている。ネット予約はすぐに完売するので、こまめにウェブをチェック(photo 写真映像部・高野楓菜)
【スリーティアーズ】 アンティークな一軒家でいただく正統派アフタヌーンティーは税込み7920円。予約は8月末まで埋まっている。ネット予約はすぐに完売するので、こまめにウェブをチェック(photo 写真映像部・高野楓菜)

■ペアリングで味わう

 さっそく正統派の料理から味わっていこう。

 1953年に開かれたエリザベス女王の戴冠式の昼食会のメニューとして考案された「コロネーションチキン」を挟んだサンドイッチは、カレー風味のクリームソースで和(あ)えた鶏肉と、レーズンの甘みとのバランスが見事! 自家製ジャムは自然な甘さがたまらない。「エルダーフラワーのゼリー」は酸味のあるリンゴのゼリーがアクセントでペロリ。ローズクリームが香る「バッテンバーグケーキ」の濃厚な甘さも本格的だ。

 自慢はなにより紅茶だ。新宅さんは「おいしい紅茶とおいしいティーフーズが組み合わさると、ティータイムが満足度の高いものになります」と胸を張る。

 日本紅茶協会認定のティーインストラクターが淹(い)れる紅茶は、品種によって茶葉はグラム単位、蒸らし時間を秒単位で変化させる。おすすめの7杯をサンドイッチに合うもの、スコーンに合うもの、と順に出してゆく。まるで料理とワインのペアリングのよう。店にお酒はないが、英国ではアフタヌーンティーにシャンパンが出ることも多いという。

「アフタヌーンティーは1840年代前半、第7代ベッドフォード公爵夫人アンナ・マリアが考案しました」と新宅さん。夕食までの小腹を満たすため、ご婦人仲間とこっそり軽食を楽しんだのが始まり。ヴィクトリア女王のお気に入りだった夫人の影響力は大きく、あっという間に貴族の間に広まったそうだ。

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