NTTドコモ北海道支社との災害協定では、移動基地局車を店舗敷地内に設置、必要に応じて充電サービスなども提供することを定めた(photo 編集部・川口穣)
NTTドコモ北海道支社との災害協定では、移動基地局車を店舗敷地内に設置、必要に応じて充電サービスなども提供することを定めた(photo 編集部・川口穣)

 いまやコンビニは地域の重要なインフラだ。セイコーマートは、2018年、北海道全域が停電するなかでも営業を続けた。なぜ、そんなことができたのか。AERA 2022年7月18ー25日合併号から。 

【写真】セコマグループの丸谷智保会長

*  *  * 

 全国にあるコンビニエンスストアは、約5万8千店。交番・駐在所や郵便局などをはるかに上回る地域の「拠点」だ。公共料金の支払いや行政サービスの提供など、社会インフラの役割も担っている。そして近年、各社が取り組みの強化を進めるのが災害対策だ。2017年には、大手コンビニなど小売り7社が災害対策基本法に基づく指定公共機関にも指定されている。

 そんなコンビニ業界の災害対策をリードしてきたのが、北海道内を中心に1176店舗(22年6月現在)を展開するセイコーマートだろう。災害が多発する出水期を前に、セイコーマートの災害対策について聞いた。

■停電時の電源を確保

 セイコーマートの災害対策が注目されたのは、18年9月6日に発生した胆振(いぶり)東部地震だった。この地震で、北海道では離島を除くほぼ全域の約295万戸が停電、都市機能がマヒした。札幌市の男性(35)が言う。

「オール電化住宅で、調理もできなかった。近所のセイコーマートが店を開けていて、作りたてのおにぎりも売っていたので何とかしのぐことができました」

 胆振東部地震の際、セイコーマートは95%以上の店が営業を継続した。他のコンビニやスーパーが軒並み休業し、街灯や信号機も消えるなか、店には長蛇の列ができたという。プロパンガス式の店内調理器具を持っている店舗も多く、フル稼働でご飯を炊いて温かいおにぎりなども供給した。さらに、札幌市からの要請を受け、発災初日に約1万個のおにぎりを提供するなど物資支援も行った。セイコーマートでは当時から、充電式電源で使える会計端末を全店に配布、停電時の車からの電力確保もマニュアル化していた。セイコーマートを運営するセコマグループの丸谷智保会長は言う。

「セイコーマートは地域の固定客に支えられたコンビニです。本部として備えはしていましたが、従業員の自主的な判断で多くの店が営業を継続しました」

著者プロフィールを見る
川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

川口穣の記事一覧はこちら
次のページ