AERA2022年7月18-25日合併号より
AERA2022年7月18-25日合併号より

 幸い症状は軽かったが、閉口したのが不便さだ。商談のためにメキシコに来たのに、オンラインでやりとりする。

 前出の取引先の男性も難儀している。急きょロス市内に取ったホテルに滞在中。航空券は同じ便の同クラスの席であれば日時変更可能というが、予約した席は設定自体が少ない。無料変更は諦め、チケットを取り直す予定だという。陰性の検査証明書がとれず、いまだ日本へ帰る見通しがつかずにいる。すでに予定は大幅に狂っている。「常用している降圧剤が切れ、困っているそうです」(メキシコ出張中の男性)。現地で手に入れるには医師の処方箋が必要だが、感染中で、英語が堪能ではないとなると、それも簡単ではない。

国内では「第7波」到来

 国内でも感染の再拡大が報じられている。7月6日の東京都の新規感染者は前週の2倍超の8341人で、前週の同じ曜日を上回るのは19日連続だった。

 感染を経験し、「すっかり気が緩んでいた」と言うのは、西日本在住の女性だ。

 6月初旬、施設に入所していた義母が急逝した。こぢんまりとした葬儀だったが、故人を偲んで食事もした。葬儀を終えた翌々日の夜、夫の弟家族4人が発熱し、PCR検査で陽性が判明。女性と夫も発熱し、陽性がわかった。結局、参列した親族の計8人が陽性になった。「万が一もあるから」と、80代の義母のきょうだいが参列していなかったのが、不幸中の幸いだった。

「外出できなくなったので、義母の遺品の整理がしばらくできず、入居していた施設には迷惑をかけました。夫は仕事が忙しくて3回目のワクチン接種がまだだった。そのせいか、発熱が4日続きました」

 いま何が起こっているのか。7日、都のモニタリング会議で専門家は「第7波に入ったとも考えられる」と分析した。実際、東京都立荏原病院耳鼻咽喉科の木村百合香医長が言う。

「感染者数は徐々に増えてきています。開業している医師らからも、発熱、咽頭痛、痰など風邪のような症状で来院した患者さんでPCR検査をすると陽性になった、感染者の増加を実感している、という話を聞きます」

(ライター・羽根田真智)

AERA 2022年7月18-25日合併号より抜粋