──9月から大学院生です。

小林:楽しみしかありません。夫(37)も日本の会社を辞め、一緒に渡米します。夫は私以上に自由な発想の持ち主で、私がやりたいことを応援しつつも、彼も新しいことに挑戦するようで、2人でワクワクしています。

■子どもの蓋を外したい

──米国では何を学ぶのでしょうか?

小林:どのような学習環境があれば、学習者の高いパフォーマンスを効果的に引き出すことができるのか、つまりビリギャルだった私がなぜ高校2年生の時にあんなに変わることができたのか。認知科学を学び、それを科学的に証明したいです。修士課程は最低でも2年。貯金をはたいて勉強します。未来への投資です。

──そこまで小林さんを突き動かすものは何ですか?

小林:使命感でしょうか。私は人との出会いに恵まれ、今はこうしてポジティブに学ぶことを楽しめる人生を歩めていますが、本当に紙一重だったと自分でもよくわかっています。

 昔の私みたいに、大人から明確な根拠なく否定され、自信をなくし人生に絶望している子どもはたくさんいます。私がそこからこっち側に来たのは、可能性に蓋(ふた)をされている子どもたちの蓋を外してあげるために教育、さらにはそれを取り巻く環境を変えるという使命があるに違いない。そう、子どもたちと接する中で思うようになったのです。

 私のビジョンは「日本を世界一幸せな子どもが育つ国にする」ことです。日本の子どもたちの低い自己肯定感をなんとかしたい。そのために、「ビリギャルのモデル」としてではなく、一人の教育者として、貢献していきたいです。今回の留学は、そのビジョンに向かう新たな一歩。ニューヨークにある教育大学院という多様な価値観が集まる環境で、しっかり学んできたいと思います。

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年7月4日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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