教員の勤務状況を考えれば年々、部活動が時間短縮されるのはやむを得ないと感じているが、子どもが楽しみにする部活動がなくなってしまうことは受け入れがたい。現在、文部科学省が準備する部活動の地域移行が速やかに進み、教員の負担を減らしながら部活動が存続することを願っている。

「野球一筋」の息子をもつ東京都の50代の母親は、部活動の縮小にも否定的だ。

「高校生活の全てを野球に捧げたいと思っている子どももいるので、先生の都合で時間を短縮するのでなく、顧問の先生にしっかりと手当を払ってほしい」と話す。地域移行をする場合は、外部指導員への謝礼が保護者負担となることも心配している。あまり負担が増す場合は、子どもに野球を断念させなければならない。

 こうした保護者や生徒の思いを尊重しつつ、教員が顧問を強制されない権利を守ることは可能なのか。

名古屋造形大学の大橋基博特任教授(教育行政学)は「教員の勤務実態をもっと広く知ってもらう必要がある」と指摘する。

「教員たちの部活動の指導はほぼ無給で、土日でも1日2700円しか手当をもらえていないことを知れば、保護者や生徒の考え方も変わるはず。僕が大学で教えている教員志望の学生たちも、部活動を指導する教員の実態を知ると驚きます」

 大橋教授は「このままでは教員の身が持たない。外部指導者を雇うなら、その費用をどう確保するか検討する必要があります。保護者も行政に費用負担を働きかけてほしい」と話す。(ライター・大塚玲子)

AERA 2022年6月6日号より抜粋