教員の間で部活動の顧問を拒否する動きが出始めている。部活動の顧問は任意にもかかわらず、嫌がらせやいじめを受けるケースもある。教員が顧問を強制されない権利を守ることはできるのか。AERA 2022年6月6日号の記事から紹介する。

※写真はイメージ(gettyimages)
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 兵庫県の30代男性教員は今春、顧問拒否に踏み切った。自分だけでなく、周囲でも多くの教員が部活動に苦しんでいる状況を見かねた末の決断だった。

 SNSを通じて知り合った教員から「顧問になるよう要請されても、粘り強く断り続けるのがコツ」とアドバイスを受け、2日かけて交渉し、顧問からはずしてもらった。本人が引き受けさえしなければ管理職もそれ以上は無理強いできないのだ。

 ただ、代償もあった。4月1日、男性教員が出勤すると周囲の教員たちの目は冷ややかだった。顧問を拒否したことが知れ渡っていたのだ。

「顧問をやらないなら教員採用試験の段階で明らかにすべきだ。卑怯(ひきょう)だ」

「部活動は教員たちの善意や無償労働で成り立っている。『やりたくない』と言い出せばまわらなくなる」

 いやみ、あてつけ、皮肉──。教員同士のひそひそ話が耳に入ってくる。最近はあいさつを無視されることもある。男性教員は「自分は間違ったことをしていない」と信じているが、職場の居心地は今も非常に悪い。

 なかには「顧問を拒否をしても問題は起きなかった」という教員もいる。

 愛知県の40代男性教員は、5年前に顧問を拒否したが「周囲には自然に受け入れられた」と話す。普段からおかしいと思うことを遠慮なく管理職に意見していたため、他の教員たちも、彼を「そういう人」と認識しており、顧問拒否にも驚かなかったようだ。

一方で、保護者や生徒は教員の顧問拒否をどう受け止めているのか。

 神奈川県の公立中学や高校に子どもを通わせる40代の母親は「顧問拒否が広がって、子どもが所属する部が廃部になるのは困る」と話す。

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