AERA 2022年5月23日号より
AERA 2022年5月23日号より

 厚生労働省によると、5月5日時点で、日本国内では原因不明の急性肝炎を起こした子どもが7人いた。

 米疾病対策センター(CDC)によると、5月6日時点で109人の急性肝炎が確認された。5人(4.6%)が死亡していた。

 最も報告数が多いのは英国からだ。5月6日に英国健康安全保障庁が公表した報告書によると、今年1月から5月3日までに16歳以下の163人が原因不明の急性肝炎を発症した。

 報告が多いのは3~5歳だ。英国全体では75%超が5歳以下。118人の発症者がいるイングランドは3~5歳が66人(55.9%)を占め、年齢の中央値は3歳、男女比は半々だった。

 英国の163人のうち11人(6.7%)は、肝臓がほぼ機能しなくなる肝不全になり、肝臓移植を受けた。亡くなった子どもはいなかった。

AERA 2022年5月23日号より
AERA 2022年5月23日号より

■アデノ流行の報告

 子どもの急性肝炎の原因として現時点でもっとも有力視されているのは、風邪の症状や胃腸炎などを起こすアデノウイルスへの感染だ。一部の国から、急性肝炎の子どもの半数以上が感染しており、アデノウイルスがここ数年に比べて流行しているという報告があるからだ。

 英国では、調べた126人のうち91人(72.2%)でアデノウイルスへの感染が確認された。

 一方、英国の感染症の発生動向調査では、21年10月以降のアデノウイルス感染症の発生頻度(ひんど)が過去5年間でもっとも高くなっていた。特にその傾向は、便など、消化器系の検体から検出されたアデノウイルスで顕著だった。

 アデノウイルスはA~Gまでの7種類に分類され、80以上の型がある。のどや鼻などの上気道に風邪の症状を起こすものや、結膜炎など目に症状を引き起こすもの、胃腸炎の原因となるものなどいろいろある。型により、体内で感染しやすい部位が目だったり上気道だったり消化器官だったりと異なる。

(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2022年5月23日号より抜粋