■不安にさらされる市民
そのもろい支持の上にむずかしい舵(かじ)取りを迫られている。
トッド氏は「対ロ制裁と言いながら、ガソリン価格上昇などの負担がのしかかるのは欧州の貧しい人たちに、だ」とみる。
また、この戦争は欧州人にとっては「日本で言えば中国による台湾侵略ほどの衝撃」があるといい、「道徳的な面を脇におくならば、フランス人にとってのよい解決とは、この戦争の外に身を置き、対立にかかわらないことだ」とも指摘した。
つまり市民は、経済負担と戦争に巻き込まれる不安に日々さらされている。ロシアとの対立の深まりを国民はどこまで受け入れられるかわからない。
難しい状況下での国家運営を委ねられる大統領になれるかどうか。最初の審判は、6月の国民議会選挙で下される。(ジャーナリスト・大野博人)
※AERA 2022年5月16日号より抜粋