2期目の舵取りを任されたマクロン大統領。1期目で失敗した「国民の統合」を実現できるか、手腕が問われる(写真:gettyimages)
2期目の舵取りを任されたマクロン大統領。1期目で失敗した「国民の統合」を実現できるか、手腕が問われる(写真:gettyimages)

 右翼候補のマリーヌ・ルペン氏を破り、続投を決めたフランスのエマニュエル・マクロン大統領。国民の分断を克服する使命を帯びるが、対ロシア問題も抱え、難しい舵取りを迫られる。AERA 2022年5月16日号の記事から紹介する。

【図】フランス大統領選第1回投票でみた主要候補のポジション

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 病気の原因か、それとも症状か。このどちらかを大統領に選べと言われても……。

 フランスの有権者の憂鬱(ゆううつ)はそんな風に表せるかもしれない。

 フランス社会は経済的な不平等などによる分断という病に苦しんでいる。グローバル化によって競争社会に変容していったからだ。投資銀行出身のマクロン氏は、グローバル化を進める側の一人である。つまり、フランスの病気の原因を象徴する人物だ。

 他方、競争社会が、収入減や失業の不安に人々を追い込むから、移民排斥といった非寛容な空気が強まり、右翼への支持となって噴出する。だとすればルペン氏は症状だ。

 決選に残った2人は、いわば病気の原因と症状。だからどちらも支持しない。

 結局、マクロン氏は選挙で強い正統性を獲得できなかった。

 前回もそうだったにもかかわらず、豊かではない人々の負担になる政策を進め、黄色いベスト運動という抵抗を受けた。

 ルモンド紙の記者は、あれは「幻滅」を表明する運動だと語っていた。フランスの市民はあのとき「若き指導者」への幻想からさめてしまった。

 しかし最近も、定年延長問題などで批判を受け、選挙前には米国大手コンサルタントへの業務委託に巨額の公費を支出していたことが暴露される事態さえ招いた。特権階級の代表というイメージは強まっている。

 今、そんな大統領が「幻想からさめた」国民に負担を求めざるをえない状況にある。ウクライナをめぐる問題だ。

 歴史家のエマニュエル・トッド氏はオンラインでの取材にこう語った。

「マクロンへの支持は、社会の真空状態を恐れる人々の支持だ。社会が無秩序にならないことを保証してくれる国家。しかし、特殊な事情による支持だからもろい」

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