
──日本の大企業と組むのにWiLは米国で創業し、伊佐山さんも米国在住です。なぜですか。
伊佐山:黒船のペリーになろうと思ったのです。日本では大企業が偉くてベンチャーを下に見る風潮があります。日本人同士だと年功序列もはっきりしているので当時の僕が何かを提案しようとしても「お前、何歳」で終わってしまう。でも米国で投資家をやっている伊佐山なら、ソニーのような大企業の社長にも会いに行けたりするのです。
■日米の架け橋になる
日米の架け橋の役目を果たすためでもあります。日本のベンチャーに提携先を紹介したり人材採用や広報活動をサポートしたり、米国のベンチャーを日本の大企業に引き合わせたり。グローバルにベンチャーの企業価値向上に貢献したいと考えています。

──経済産業省が起業家や企業内起業家の育成を目的とするプロジェクト「始動」の運営にも長年、携わっています。
伊佐山:起業をITや若者だけではなく、社会全体に広げていきたいという思いから、医師や地方公務員、学校の先生、主婦らに勉強をしてもらっています。世の中には社会の課題が見えている人がたくさんいます。ただどうしていいか分からない。課題解決の一つの有効な方法が起業だと我々は考えています。
本当に大きな変化を起こす時にはルールメーカーの存在を無視することはできない。力を持つ人たちに喧嘩(けんか)を売るのではなく、彼らに取り入ってでも、彼らが持つリソースを使わせてもらう。政府だけでなく社会全体に支援してもらう。そんな風に考えるのは僕の父親が官僚(父は通産官僚で特許庁長官を務めた伊佐山建志氏)だったからかもしれません。
(敬称略)(文/ジャーナリスト・大西康之)
※AERA 2022年4月4日号より抜粋