過重業務と責任の重さ

 アンケートの自由記述では、「将来に希望が持てない」(30代、東京都)など、日々感染リスクと闘いながら、低賃金のまま働くことへの不満の「声」が多く寄せられた。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、2020年の保育士の平均給与は24万9800円。全産業平均の33万800円を8万円以上下回る。

 保育士の賃金が低い要因は、国が運営費を支給する基準となる「公定価格」が低いことと、「配置基準」が不十分だからと指摘される。配置基準とは、例えば、保育士1人あたり0歳児なら3人、4~5歳児クラスなら30人と、子ども1人に対し保育士の必要人数を表したもので、国や各自治体によって定められている。ただ、この基準では手が回らず、多くの保育園で独自に保育士を雇っている。支給される運営費を分け合うため、1人分の賃金は低くなる。

 先の薄さんによれば、特に保育士になって3、4年目の若い保育士が辞めていくケースが目立つという。

「経験年数が短いのに、コロナ禍前からの過重業務とベテラン、中堅職員が少ない中での責任の重さ。それに見合った給与ももらえません。もう頑張れないと辞めていきます」

 東京都世田谷区の認可保育園に勤める男性保育士(42)は、多くの保育士が「辞めたい」と思う気持ちが理解できると話す。

「やはり給与が原因です。専門性があり子どもの安全や命を守らなければいけない仕事で、神経を使う職業であるのに給与が低すぎます」

 男性の給与は月25万円ほど。保育士歴10年近くになるが、この間、給与が増えたという実感は薄い。独身なのでまだ何とか生活できているが、せめて全産業平均は欲しいと訴える。(編集部・野村昌二)

AERA 2022年3月28日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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